最近、東電の発送電事業分離が話題とされるようになった。
送電部門(B/S上での資産:5兆円)を売却し原発事故賠償の原資にするという考え方のようだが、
ここではこの議論はせず、自由化全般について考えてみる。
我々利用者にとっては、安定した供給と低価格が確約されるならば事業形態はどうでも良い話だ
が残念なことに利用者側の観点から議論された形跡がない。
供給者側は独占販売を守り経営の安定を図りたいから、安定供給、電源の質の確保(電圧変動、
周波数変動)などを理由に防御するのだが、売電価格を先進国と比較すると、為替レート、電力会
社、料金体系などによりバラつきはあるが、家庭用、産業用ともその差は縮小したとはいえ世界一
高い水準になっている。特に東電はわが国の電力需要の約1/3を供給する大会社にも関わらず高
いということはどういうことなのか。その理由として良くあげられるのが設備稼働率だ。優良会社とし
てファイナンスし易いから設備投資もするのだが本当に需要変動に対する稼働率なのか。
過剰な設備投資をしていると想像する。また経済財政白書をみると分かるが産別賃金では断トツに
高い。これでは社会と産業を支えるインフラ事業とは言えないのではないだろうか。
近年、世論の高まりから売電もできるようになったが、先に述べた電源の質の条件および託送料金
の高さからなかなか進まず約3%程度に留まるという。企業には自家消費外にその気になれば不
足電力をカバーできる発電能力があるはずだが、技術論のほか不測事態時における緊急受電等考
えざるをえなく公平な契約ができないことなどで進まないのだろう。あるべき方向性を急ごう。
基本は発送電分離によるスマートグリッド技術(発電側と需要者側の双方向通信による電力制御、
節電制御、自動検針)の促進、及び自家発電できる企業、自治体を中心とした地産地消モデルの推
進だ。これらは自然エネルギー比率を高めようとする先進国、エネルギー不足に悩む新興国にも売
れるシステムになる。電力に限らずわが国に欠けているのは個別技術ではなく運用を含む総合技術
だ。1社独占では独占者の意向に沿わざるをえないから競争的技術革新が起こらない。但し、原発
については国策と言うだけで誰が実体として責任をもって管理しているのか分からない状態にある。
組織形態については充分議論する必要がある。
参考①:
東京電力HP(有価証券報告書関連)
参考②:
内閣府HP(平成22年版経済財政白書P285)