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カテゴリ:読書( 95 )

為替相場

輸出企業を悩ます円高ですが為替相場はどのような要因で動いているのだろうか。
佐々木融 『弱い日本の強い円』 日経新聞社(2011.10) を読むとスッキリする。
あらまし次の通り。ニュースでは短期金融市場の動きが報道されるために投機的な動きがすべてを決めているような誤解を招いている。短期的な資金移動は行きと帰りで相殺される性格のものでニュートラル。為替相場を動かしている中長期的要因は各国のインフレ率の違いからくる貨幣価値の変動、及び貨幣交換の向きの2つ。すなわち相手国のインフレ率>日本のインフレ率の関係では円の価値は上がるから当然円高に(購買力平価説)。また日本の貿易黒字が続く限り米ドル売り円買いのフロー、即ち円高基調は続くと説明する。為替相場の本質を淡々と説明してくれているのでわかり易い。次に本書をベースに現実の問題を考えてみたい。そもそも円高は悪か?確かに米ドル建ての輸出企業にとっては競争力を失うことになるので困ることだ。しかし日本全体では米ドル建て輸入>米ドル建て輸出の関係があるからすでに円高を享受しているのだ。問題は円高を内需拡大、海外直接投資など円高を上手く活かせないことにある。反対に急に円安に転じたならばどういうことになるのだろうか。むしろ恐ろしいことになる。間違いなく貿易赤字は更に拡大するだろう。しかも大赤字の電機などはウォン安が続いている限り輸出は増えない。デフレが悪いと言っているが望んでもいないインフレの時代が訪れるだけなのだ。利ざや稼ぎに外貨が短期的に流入し更なる円高となるだろうがその後はリスクを恐れて一気に円売り外貨買いの超円安、国債の暴落などまさに経済崩壊のシナリオしかない。著者が言うように短期的な資金移動は長期的にはニュートラルとはいえ現実にはキャピタルゲインを目的とした投資家の行動が同期するとバブルに続いて金融危機を引き起こすことは歴史が教えている。次に貿易赤字が長引くとどうなるのか?確かに経常収支としては黒字だから今すぐどうということはない。しかしそもそも所得収支も貿易黒字により積み重なったものであるから貿易赤字が恒常化すればこれも少なくなってくる。また所得収支の中身も株式投資などによるもので欧米の景気低迷が長引くと収益率が低下してくる。近年その傾向にある。今考えなければならないのは抜本的に輸出競争力を高めるための産業構造の転換ということになる。
by bonjinan | 2012-02-14 17:16 | 読書

「林住期」考察

「今、私はなぜブッダを書かなければならないのか。
ブッダが、どこにもいないからである。
いくらさがしても見つからないからだ。
その人は、いつも姿を隠している。」
こんな書き出しで始まる書がある。
山折哲雄『ブッダは、なぜ子を捨てたのか』集英社新書2006年だ。
シャカ族の王子でありながら、妻子を捨て、父母を捨てた若き日のブッダ。
身勝手な青年ブッダの姿を描きながら、今ブッダはどこにいて、何を伝えようとしているのかに思いを巡らす。古代インドでは人生のあり方を「学生期」、「家住期」、「林住期」、「遁世期」の4段階に分けて考えていたという。「家住期」は結婚し子どもをつくり職業に従事する時期なのだがこの時期を放棄し「林住期」すなわちこれまでやろうとして果たすことのできなかった夢を実行に移そうとするステージに飛び込み、最後はブッダガヤの菩提樹の下で瞑想に入り悟りを拓いた、即ち一握りの人間だけが到達するとされる「遁世期」に入ったとされる。凡夫の私には、本書を何度読んでも、ブッダの生き方をとても理解できない。あえて言うならば動かしがたいカースト制の枠組み、生と死、善と悪、理性と本性など対極となるものが日常生活の中で混然一体と繰り広げられていたであろう古代インドの風土がブッダを万人を代表して非情の道に進ませ、後世の人びとに真なるものを追及させようとしたのだくらいな台詞しか思いつかない。山折先生は原初インド仏教が「無我の仏教」とすれば日本仏教は「無私の仏教」「心の浄化を志向した仏教」だとも仰っている。我々定年退職後のステージすなわち「林住期」をどう過ごすかを考えてみる時、「無私の仏教」はむしろ能動的な生き方、健全な生き方を我々に促していると考えたい。山折先生は本書の最後で、京都の寺をまわりながら「阿弥陀如来や釈迦如来は、もうお堂の中にはおいでにならないかもしれない。薄暗い、狭い空間の中では身じろぎもままならぬ、息苦しいだけだ、とお感じになっているかのようだ。それで仏・菩薩たちは、今やそのような閉ざされたお堂から脱出して、広々とした庭のほうに移動されているのだろう。・・・・・・」人びとがお堂から足早に抜け出し縁側に向かう姿から「人びとの流れは、その仏・菩薩たちの声を庭の中に聞き、その庭をとりまいている大自然の中に、ブッダの気配を感じはじめているのではないだろうか。」と結んでいる。ところで近年、「少子高齢化」がもたらす経済の停滞、社会保障費の増大、財政悪化、増税など経済問題だけがクローズアップされるのだが、生き方の観点からはあまり議論されてはいない。
厚労省人口動態調査によれば2005年以降、「生まれてくる者より死者が多い社会」になっている。
これからさらに差は大きくなっていくだろう。人間の生死だけで考えると喜びより悲しみが大きい社会に向かっているとも言える。悟りを拓く「遁世期」を求めずとも、それが「家住期」に、或いはもっと「学生期」に後戻りするようであってもむしろ明るい能動的な「林住期」の過ごし方が求められているような気がする。
by bonjinan | 2012-01-15 10:50 | 読書

読書、ワインの科学

酒好きが集まると何人かに一人はやたらと酒にまつわる薀蓄を語り続ける人がいる。
酒のつまみ程度なら良いのだが初めから終わりまで続けられるとうんざり。
それが上司ともなれば前と同じ話を聞かされても感心しなければならないから大変だ。
ネタ不足の人、あるいは逆襲に出たい人にはもってこいの本がある。
ジェイミー・グッド著梶山あゆみ訳『ワインの科学』河出書房新社(2008.6)だ。
ブドウの栽培、ワインの醸造、ワインと人体の関係の章に分け、それぞれ最新の科学的研究を織り込んで書かれている。ワインと健康との関係では、赤ワインに含まれるポリフェノールが抗酸化作用をもっていること、動脈硬化を防止することなど断片的は知っているが私などはそれから先が進まない。本書を読めば、フェノールはレスベラトロールなどでこれがLDL(悪玉コレステロール)の酸化を防ぐこと、酸化したLDLは細胞に取り込まれやすいため掃除係りのマクロファージ(白血球の一種で異物や老廃物を捕食し消化する大型の免疫細胞)にLDLがたくさん溜まり脂肪性の泡沫細胞化となること、これが蓄積すると動脈硬化を促すとのプロセスを知ることができる。これは人間ドックで感じていたのだが、適量のアルコールを摂取するとまったく飲まない場合に比べて血液中のHDL(善玉コレステロール)の濃度を高めることも書かれている。その他、レスベラトロールの抗腫瘍作用、サーチュインの活性化など最新の話題も述べられている。サーチュインはDNAに巻き付いているタンパク質で代謝の状況を検知して延命プログラムを始動すると言われ最近話題の分子。カロリー制限すると働きだすと言われているが適度にワインを飲めばカロリー制限せずともその効果が期待できるのでは?としても話題を呼んでいる。メカニズムははなはだ厄介だが良く理解すれば健康、長寿とも関連する話なので、古臭い薀蓄話ではなくなってくる。ワイン・テイスターの脳、風味を作る化合物などの項も面白い。
参考:7/4ブログ(夢の長寿遺伝子)
by bonjinan | 2012-01-11 11:38 | 読書

ドイツ病

欧州債務危機が叫ばれる中でドイツ、フランスは優等生のイメージが強い。しかし熊谷徹『ドイツに学べ』新潮選書(06.8)を読むと多くの問題を抱えていることが分かる。少々古い本なのだがまるで現在の日本をみているようである。慢性的な高失業率(約10%)、産業の空洞化、富の偏在、人口減少と公的年金の危機、社会に漂う閉塞感など失業率で差はあるもののわが国の抱える課題と同じなのだ。失業率については数字上は旧東ドイツの高失業率が足を引っ張る形なのだが、より大きな要因は中東欧諸国、新興国への産業移転が進んでいるからのようだ。またかつてマイスター制度で守られてきた社会に中欧からの手工業者が流入していることも失業率を高めているようだ。企業からみると高福祉国家ならではの労働コスト(04年、1時間当たりコスト27.6ユーロうち給料15.45、社会保険等付随費用12.15)に直面しており低労働コスト国に移転せざるをえないとの事情によるが、対策として海外移転だけだなくホワイトカラーの生産性向上、即ち価値の創造に必死に取り組もうとしているようなのでわが国より健全といえば健全である。コスト追及だけでは先細りになると考えているからだ。公的年金の危機は人口減少からきており30年には100人の払込者で100人の受給者を支えなければならないとのことでありこれもわが国と状況は同じである。ただわが国と違うところは財政規律を守ろうとして問題解決にあたっていることだ。著者は高福祉という甘い毒が国民に国家依存症というドイツ病をもたらしており治癒には相当な時間がかかるだろうとも述べる。振り返ってわが国をみると国に頼る地方の関係が固定化し、また国会議員がその利益誘導係りとして活動した結果、巨額の債務を積み上げた。ドイツとは違った経過で国民に国家依存症をもたらしてしまった。あるべき姿の追求を放棄してしまったようなわが国の病の方が重病かも知れない。何かにつけドイツに学ぶことは多そうだ。
by bonjinan | 2011-12-27 18:08 | 読書

フランスの謎

世界で最も全体像を掴みにくい国の一つにフランスがある。
「自由・平等・博愛」を掲げ、外交ではアメリカに勝るとも劣らない存在感を示し花の都パリには毎年7,000万人を超える観光客を引付ける。一方、失業率でみると約10%、特に若い人では約20%にもおよび、日常茶飯事のようにデモ行進があり、またものすごい学歴主義、階層社会でもある。
観光旅行で行く程度の私に簡単に分かるはずもないのだが・・・・。
そんな疑問に、小田中直樹『フランス7つの謎』文春新書(05年)が答えてくれる。
少し抜粋してみる。
「第2の謎・・・なぜいつでもどこでもストに出会うのか。答・・・「自分のことは自分でやる」という伝統と「おたがいさま」という心性が存在してきたから」。
労働組合の代表が労使交渉、政策決定会議に参加するとしても個々の労働者の意見を反映してく
れる保証がなく直接行動に訴えるのだという。組織論から理解しようとしても分からないわけだ。
「第6の謎・・・なぜ大学生がストライキするのか。答・・・フランスは「ものすごい」学歴主義の国だが、大学生はエリートではないから。」高等教育機関への進学者は50%を超えるが、大学入学試験(バカロレア)に合格すれば入学できる一般大学とそれだけでは入学できないグランド・ゼコールと呼ばれるエリート養成校が併存する。絶対ではないが階層により小学校から自然とコースが分れてしまうのだそうだ。この階層にもとずく複線主義が分かりにくいところだ。ということで大学生はエリートと思っていないから教育環境などで不満があればデモもするのだという。自分の道は自分で拓くしかないと考えているわけだ。
以上、本書によりフランスの全体像までは掴めないまでも一部を知ることができる。
平林博『フランスに学ぶ国家ブランド』朝日新聞出版(08年)も読んでみたがこちらは駐仏大使の眼でみた国レベルの話。生活者レベルでの様子は掴めない。
※ストライキのこと仏語では「greve」

追加
フランス革命の有名なスローガン「自由、平等、博愛」における「博愛」の意味
「 fraternite は日本ではふつう「博愛」と訳されていますが、共同体を想定する言葉であって、
 より正確に「兄弟的連帯意識」と訳すべきだと思います。」
引用:ロナルド・ドーア 『働くということ~グローバル化と労働の新しい意味~』
中公新書 2005年

追加
仏大統領選に選ばれたフランソワ・オランド氏はグランゼコールのパリ政治学院を卒業、大学院に相当する国立行政学院を出ている。エリートだ。

追加
飛幡祐規(Takahata Yuki) 『それでも住みたいフランス』 新潮文庫(2015.1)を読んだ。パリに40年暮らす著者がみたフランスの生活風景が統計データを交えながらしっかり書かれている。「フランス人にとってブランドとはまず、特定の豊かな社会階層に自分が属することを示す印だから、高級ブティックは庶民や中産階級が足を踏み入れる場所ではないのだ。フランスの中産階級が豊かさを誇示したい、人並みにふるまいたいと思うならば、それはブランドものを身に着けることではなく2月の学校休暇に家族で1週間スキーに行き、夏のヴァカンスのあとに日焼けした笑顔をみせることだったりする。・・・」「モノをたくさん持たなくても恥ずかしくないどころか、なるべくモノを増やさない主義の人も多い。ごちゃごちゃモノで埋めず、極力すっきり広く見せるのが居住空間の理想なのだ。政府と広告はこぞって消費をあおるが、広告退治に情熱を燃やす人々もいるくらいで、市民はなかなか手強い。」その他、慎ましやかに、しかし賢く個性的に生きようとしているフランス人の姿が書かれている。「カトリック文化圏においては、金儲けはどことなく罪深い行為であり、お金の話をするのは野暮で恥ずかしいこと、ほとんどタブーなのだ。」「わたしの住みつづけたいと思わせるフランスの魅力とはお金では買えない、ひとことで言ってしまっては空回りするような、成熟した、したたかな精神である。それは、たえまなく対立・抗争を重ねた歴史の重みから生まれ、数々の矛盾を呈しながらも、しなやかなユーモアを編み続ける。幼稚きわまりない二元論がのさばる今、このしぶとさとユーモアこそ貴重なのではないだろうか。」
(書かれていた参考数字)
国立統計経済研究所の2011年の平均月収(民間、公共部門ふくめて)2128ユーロ。最低賃金の
月額手取りは2014年現在、1129ユーロ弱。しかし最も富裕な層の収入が増大する一方、低所得
層が広がって貧富の差が大きくなった。収入の中央値は2011年で1712ユーロ。

追加
今、大人気のトマ・ピケティ(1971-)は、バカロレアのC種(数学と科学)を取得した後、18歳でグランゼコールの一つパリ高等師範学校に入学、わづか22歳で高等師範学校とロンドン・スクール・オブエコノミクスの経済学博士号を取得している。
by bonjinan | 2011-12-24 17:49 | 読書

デフレの正体

今回は藻谷浩介『デフレの正体』角川書店(1010.6)を採り上げます。
わが国の長引くデフレについて、多くの経済書は慢性的需給ギャップをあげるがその原因については明確にしていない。著者は生産年齢人口(厚労省統計15-64歳)が96年以降、減少しているにも関わらず、景気は循環するもの、いつかは回復するものとの妄想がデフレを長引かせているという。生産年齢人口=消費者人口が減ってきていることが景気の下方圧力として働いているのだと述べる。このためにつねに供給過剰の状態、更には海外からの低価格品が入ってきて価格競争を激化させ付加価値の総額(GDP)を目減りさせているとする。最近、人口減少、少子高齢化が叫ばれてはいるものの、長期的には確実に大きな変化をもたらすがその変化がゆるやかであるために、経済成長すればすべては解決するとか、付加価値生産性を上げれば良いといった甘い政策、言論にかき消され問題が先送りされている。これについても著者は分かりやすく切り込んでいる。今のままでは前述の通り内需が拡大する明確な理由がないこと、特に製造業における人減らしによる生産性向上が国全体の生産性向上につながらなったことなどをデータで示している。ミクロ経済にどっぷり漬かっている人、私を含めてマクロ経済学を学び生身の生活シーンを忘れ社会全体が分かったような人には現実問題を改めて見つめ直させてくれる良書である。リフレ政策についても国際的な物品価格の下落動向の前にしては意味なきことと否定している。デフレ脱却策については、高齢富裕層から若者への所得移転による消費拡大、女性の就労拡大、および外国人観光客、短期定住客の拡大受入れの三つをあげている。しかし脱却策については問題部分がある。先ず高齢富裕層からの所得移転による消費拡大。特に大きな金融資産を温存し続ける富裕層に限って言えばその通りだと思うが、高齢者全体について述べているのだとすれば疑問が湧く。圧倒的多数は支給される年金はすべて消費に使われ、これでは不足するために貯蓄を切り崩して生活しているからだ。また日々の観光もこうしたマネーで成り立っていることも無視できないからだ。さらに個人貯蓄が金融機関経由で国債を買い支え、それが国債の暴落を抑えているのも現実だ。10年位のレンジで考えた場合、むしろ国債が安定して買い支えられるのか心配だ。次に女性の就労拡大。大いに結構だ。それには企業が企業の都合に合せられる人だけを求めるのではなく、人口減少時代を見据えて、働きやすい環境を提供できなければ、男女を問わず優秀な人材を雇用できなくなるということから認識する必要があろう。その上に立って、北欧、オランダなどにみられるよう公・労・使が徹底的に話し合って、同一労働同一賃金、男女ワークシェアの社会を構築していくことが必須になる。三つ目の観光客誘致。これも大いに結構だ。だが歴史的文化的遺産がある場所ならともかく、そうでない場所まで一律に観光を町おこしとするのには疑問が湧く。言って良かった町というのはそこに住む人が楽しみながら生活していること、またそこから元気をもらえる場所という観点から検討すべきであろう。私にはこうした疑問は各所にあるものの、机上の論を戦わせているのではなく現場から経済の立て直しを考えてみようということで書かれ意欲的な書と考えたい。
by bonjinan | 2011-11-29 15:01 | 読書

読書、貨幣進化論

内閣府から、昨日、2011年7~9月期のGDP一次速報が発表された。
4~6月期に比べて実質1.5%増(年率換算+6.0%)、名目で1.4%増(年換算+5.6%)、GDPデフレータでは前年同期比1.9%減とのことで相変わらずのデフレ基調が続く。
直接関係するわけではないが、岩村充 『貨幣進化論』 新潮選書(2010.9)、副題「成長なき時代の通貨システム」を読んでみた。
上記デフレ脱却の処方箋など書かれているわけではないが、私のような素人に通貨の歴史、その性格を優しく解説してくれる。特異な論を出す書は話題にはなりえても基礎を学ぶには適さないものだ。
この観点から良書だ。
本書から引用しよう「現在の日本経済にとって最大の課題はデフレからの脱却だと論じる人は多いが、デフレから脱却した後で起こるのが「緩やかなインフレ」になる保証はない。むしろ、財政アンカーの崩壊による急激なインフレへと局面が急変してしまう可能性の方が高いのではないだろうか」
本書ではまたヒエロニムス・ボスの『愚者の船』(ルーブル美術館蔵)が紹介されている。絵の中の「三日月の旗は当時のヨーロッパにおける最大の脅威だったオスマントルコ帝国を象徴しているとされている。ボスの描く愚者たちに限らず、やがて来る真の脅威が何なのか予見することは現代の私たちにとっても難しい」とわが国の現状と重ね合わせて紹介している。
参考:wikipedia ルーブル美術館 愚者の船
関連ブログ:2010.1.7”日銀貨幣博物館見学”
by bonjinan | 2011-11-15 16:38 | 読書

読書、円高問題

今週は、浜矩子『「通貨」を知れば世界が読める』PHPビジネス新書(2011.6)。
東日本大震災、原発事故で識者による「想定外」という不遜な言葉が使われた。
冷静に考えてみれば「考えたくなかっただけのことが現実に起こった」であった。
最近の経済、金融についてみると、もっと深刻で「この先何が起こるのか想像すらできない」状態にある。例えば円高問題。この先、超円高になっても超円安になってもおかしくない状態にある。暫く前まで確固たる基軸通貨の地位にあったドルが「流動性ジレンマ」からその地位を脱落しつつあり、第二の基軸通貨と思われてきたユーロがこれまた崩壊しつつもある。著者は円が隠れ基軸通貨として「1ドル50円の時代を想定」する。各国が通貨安競争をしている現況をみればもっとも可能性が高いと思えてくる。もっと素朴に1985年のプラザ合意以降の為替相場を鳥瞰しても多少の上下変動はあったものの円高基調であったことからも頷ける。著者は将来の望ましい通貨の姿として地域通貨と決済通貨としての共通通貨の併存形態を描く。この論はともかく、本書を読めば通貨、基軸通貨の歴史とその意味、限界を我々素人に分かり易く説明してくれる。

追加
4日の東京市場一時1ユーロ100円88~92銭
by bonjinan | 2011-10-03 10:29 | 読書

読書、都市の興亡

東日本大震災から半年。復旧、復興が急がれるのだが都市とはどのような性格のものなのか。
ジョエル・コトキン『都市から見る世界史』ランダムハウス講談社(2007.5)を読んでみた。
著者によれば「人類の最大の創造物は都市であり自然環境を再形成する能力の証である」そして「都市の栄枯盛衰を決定してきた普遍的要素は①場の神聖性②安全の必要性③商業の役割の三つ」だという。この切り口から東日本大震災後の復興について考えてみた。とりわけ重要なのは物理的復興もさることながら雇用の創出であることが分かる。
①場の神聖性
西洋では高い建物の大聖堂、モスクが町の神聖な場所として町の中心にあるが、わが国では町を見下ろす山をはじめ、広くは町を取り囲む自然景観そのものが信仰の対象であったからこの条件はいたるところ神聖な場所になりえた。問題があるとすれば山を崩すなどで元々の景観を大きく変えてしまうことだ。
②安全の必要性
大陸では民族の対立、都市の対立など人と人との抗争が絶え間なく繰り返され城塞で取り囲んだり、断崖の上に町を築くような防御をしてきた。わが国では人と人との争いを考える必要はなかったが自然災害が最も安全を脅かすものであった。しかし一方で自然は恵みをもたらす存在でもあったから災害も時にはやむを得ないものとして受入れてきた。今回の震災で大きな被害をもたらした津波だけ考えれば高台に移ることが基本だが厳しい自然環境のためこうした場所は限られ、経済的にも制約を受けることからそう簡単ではない。非常時には安全な場所に逃げやすくする工夫が不可欠になってくる。まさに創造力のみせどころだ。放射能汚染地域については、政府は除染すると言っているが政治的判断ではない冷静な判断をして貰いたいと思う。除染効果の限界も早急に明らかにすべきだ。生活設計に絡むからだ。
③商業の役割
物資の集散地となり人が行き交う場所でなければ町にはならない。今回の震災復興を考える場合にも最も重要になる。仕事がなければいくら町をかたちだけ復興してもすぐさまさびれてしまうからだ。漁業の復興が鍵になるのだが、元々漁業関係の仕事をされていた方が元の仕事に戻る程度では復興とはほど遠いものになる。そうでなくてもわが国の労働人口はこれから急速に減り国力も減衰していく。被災地からの人口流出は復興以前のゆゆしき問題で、復興の基本はより多くの雇用を創出できるかどうかに掛っている。なんだかんだ言いながら「現役世代のための復興投資となり借金だけを将来世代に残していく」ことになっていないか。これまでの公共投資と何が違うのか冷静に分析し点検する必要がある。
<参考データ>
日本の人口:1億2751万人、生産年齢人口(15~64歳):8149万人 @09年
これから20年で人口は約1200万人減、生産年齢人口は約1400万人減
被災3県の人口:567万人(日本の人口の約4.4%) @11年
震災による死亡者:15,782人、行方不明者4,086人、避難者:約8万人
被災3県からの転出:8万人、転出-転入差:3.6万人(住民票届出ベース)
震災失業者:約11万人(全国の完全失業者数302万人、失業率4.6%)
仕事がなければ人口減はますます加速することになる。
参考:6/19ブログ(集落の教え)
by bonjinan | 2011-09-12 12:19 | 読書

読書、北欧学

近年、北欧の文化が世界で注目されるようになっている。
東海大学文学部北欧学科編著『北欧学のすすめ』東海大学出版会(2010.2)
を読んでみた。地勢、歴史、文化、社会制度など分かり易く平易に書かれており北欧を鳥瞰的に知る上でたいへん役に立つ。特に注視したのは福祉政策で具体的には2000年に抜本改正されたスエーデンの年金制度であった(国民基礎年金+国民付加年金からなる二階建年金制度から生涯所得比例型年金制度へ)が、詳細は書かれていないので残念。北欧諸国では社会福祉、教育を経済を維持・成長させるさせるための政策の柱と位置付けられ、そしてそれが成功してきているのだが、制度改革はこうした観点からみて社会が変質してきたことによるものか知りたいところだ。
by bonjinan | 2011-08-15 18:17 | 読書