源氏山を背にした扇ガ谷に、かつて鎌倉五山三位と位置づけられた「壽福寺」がある。
総門から中門に至る参道の敷石が美しい。

総門:禅寺とは言え静かな入口である。

参道:直線の参道に変化を付けた美しいデザイン。鎌倉随一の参道と思う。

仏殿:中門から中は公開されていない。
仏殿奥の墓域には源実朝、北条政子のものと言われる五輪塔を安置したやぐらがあるという。
以下、実朝(1192-1219)のこと。
実朝は鎌倉幕府第3代征夷代将軍であるとともに『百人一首』にも選ばれる歌人でもあった。
「世の中は常にもがもな渚漕ぐ海人の小舟の綱手かなしも」(鎌倉右大臣、実朝のこと)
暗殺を予感して詠ったものか、そうではないとしても「みやこ好み」が御家人から疎んじら
れて幕府内では孤立無援状態にあったと思われこうした歌が謳われたのかも知れない。
実朝の歌集『金槐和歌集』に無常を詠った名作もある。
「世の中は鏡に映る影にあれ あるにもあらずなきにもあらず」(第654首)
権力欲の渦巻く政治の世界の実像は一体何なのか自問自答しながら詠ったものであろう。
総門脇に平山郁夫書「源実朝をしのぶ」と書かれた生誕800年記念碑がある。
参考(壽福寺沿革)
創建:1200年、開山:栄西、開基:北条政子。源実朝とも。
寺宝:栄西『喫茶養生記』、茶の効用を著したもので実朝に献じたものとされる。