人気ブログランキング |

AREKORE

bonjinan.exblog.jp
ブログトップ

イノベーションとは?

かつてオーストリアの経済学者・シュンペーター(1883-1950)は、「市場経済はイノベーションが加わらないと均衡状態に陥ってゆく。均衡では企業者利潤は消滅し利子もまたゼロになる。均衡は沈滞である。だから企業者は、つねに創造的な破壊をし続けなければならない」(Wikipedia)と言った。技術革新と訳されるイノベーションとは一体どのようなものなのか。楠木健『経営センスの論理』新潮社を読んでみた。
楠木は、「イノベーションは「進歩」ではない。イノベーションの本質は「非連続性」にある。但しそれが非連続性であったとしても、単純に斬新なだけでは顧客に受け入れられない。多くの人に受け入れられて、その結果、社会にインパクトをもたらすものでなければならない。」と述べる。著者はイノベーションの例として、サウスウエストの戦略(ハブ&スポーク方式からポイント・トゥ・ポイント方式へ)、アマゾンの戦略(単純なEコマースではなく、数ある商品の中から顧客が比較し選択するためのプラットホームを目指した)、アップルの戦略(技術的に「できる」機能と、顧客がその気になって必ず「する」という機能を徹底的に切り分け絞り込む)をあげている。当時の業界常識からは大きく外れた非連続性が認められる一方、ユーザー側からみると非連続でもなんでもなく使い勝手を格段に良くした連続性があったとする。確かに誰でもその気になれば技術的に可能なものばかりだ。著者は「イノベーションは(業界からみた)非連続性と(ユーザーからみた)連続性の組み合わせでできている(内は筆者挿入)」と結論づけている。その通りだと思う。ではどうすればイノベーションを引き起こす環境ができるのだろうか。さすがに著者もその方程式はないとして書いてはいない。もちろん筆者にも書けない。ただこれだけは言える。「人まねをしない」「顧客の利便性を最優先に考える」ことだ。最近、特に気になることがある。日本を代表する通信会社、ドコモ、AUの熾烈な顧客囲い込み合戦だ。ユーザーの利便性を抜きにして格安だと訴求するやり方におどろく。買い替え需要を促す結果として起こるのは端末の輸入増による貿易赤字拡大ではないか。一体、両社は何を考えているのだろうか。イノベーションとは程遠い現実におどろく。このエネルギーがあったなら使い勝手を世界一良くして欲しい。もっと世界に目を向けて欲しい。

(余談)優れた経営者はイノベーター
かつて鎖国の江戸時代に流行った浮世絵が19世紀の西洋画壇に大きな衝撃を及ぼしジャポニズムを引き起こした。単なるエキゾティシズムを越えて、大胆な構図や雨や風をも表現する創作力に衝撃を与えたからだと言われている。この歴史的事実から学ぶことは三つある。一つは、西洋画壇において誰しも考えるトレンドの延長上にはなかったこと、二つ目は、北斎や広重は絵画の基本をしっかり学びながらも画狂と言われるほど創作意欲に燃えていた、その迫力が伝わったということ、三つ目は、良いものは良いと認める人たちがいたということだ。振り返って成長戦略を考えてみても成功のための要件は同じことだろうと思う。優れた経営者、事業家と言われる人をみると、ビジネスの現場でこうしたこと(差別化、熱意、市場環境)を理屈ではなく感覚的に見抜き、人を育て、自ら行動する人たちのような気がする。言い方を変えれば優れた経営者はイノベーターなのだ。コーポレートガバナンスにより経営者が会社の外を気にするあまり防衛的、官僚的になるのだとすれば長期的な活力が失われていくであろう

(追記)イノベーションとは?その2 チャンドラーの考えた企業の発展
「組織は戦略に従う」で有名な米経営学者・アルフレッド・チャンドラー(1918-2007)は、企業活動は非連続的な飛躍よりも、むしろ日々の連続的な経営管理業務、技術蓄積あるいは改良を遂行する経営管理者によって着実に進展するとした。ただその後の経緯をみると起業家型経営風土が薄れ管理者型経営風土(管理者の官僚化、貴族化、変化からの逃避)が強くなってきたと思われる。先進国経済が停滞するとともに改めてイノベーションが問われている。

(追記)イノベーションとは?その3 クレイトン・クリステンセン氏の考えるイノベーション
『イノベーションのジレンマ』(Harvard business school press 2001.7)を著したハーバード・ビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセン氏(1952- )の提示したイノベーションについてみてみる。
(1) 「イノベーションのジレンマ」:すべてのことを正しく実行するといずれ失敗する。
ソニー、パナソニックはその代表例。日本の大企業は倒産しない代わりに米シリコンバレーで起こったような破壊的イノベーション(disruptive innovation:市場をリードしていたはずの企業が、技術で劣る企業の新製品でいとも簡単にトップの座を奪い取られる)を知らない。アップルはその例としてあげられる。
(補足)
クリステンセンはハードデスクの歴史を定量的に調べ、面積当たりの記憶容量を引き上げるイノベーションを「持続的イノベーション」と呼んだ。一方、デイスクの容量は小さくなるが小型化により新たな用途を開拓した。これを「破壊的イノベーション」と言った。これに対して、山口はこの破壊的イノベーションに関して「未来社会が求める新しい評価軸を発見して違う未来に向かうプロセス」だたとし、「性能破壊型イノベーション」と呼ぶべきであるとしている。
(引用:山口栄一『イノベーションはなぜ途絶えたか』ちくま新書)

(2) イノベーションのパターンには三つある。
①エンパワリング・イノベーション(empowerring innovation)
精巧で高価な製品をシンプルで手頃な価格に変えるイノベーション。特定の企業、人しか使えなかったものをより多くの人が使えるようにする。実際の仕事を創出する。ソニーのトランジスタラジオ、ウォークマン、IBMのパソコン・・・。
②持続的イノベーション(sustaining innovation)
トヨタのカイゼン運動。またプリウスのような製品、ガソリン車を置き換えるが仕事は創出しない。
③エフィシェンシー・イノベーション(efficiency innovation)
すでに製造され販売されている製品をさらに効率良く、手頃な価格にするためのイノベーション。
労働プロセスを合理化するため資本をつくりだす。但し新しい仕事は創出しない。
企業はこの三つのイノベーションの間を移行していく。理想的にはこの三つのイノベーションを循環するように企業運営されるべきと説く。確かに日本の企業は大局的にみて②段階か、多くは③に移行したままで、①を喪失した状態にある。経常利益は増えても製造業の雇用は20年前と比べると約500万人減ったまま。
参考文献:クレイトン・クリステンセン他、大野和基編 『知の最先端』 PHP新書(2013.1)

(追記)イノベーションとは?その4 ブルー・オーシャン戦略
フランスの欧州経営大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュ『ブルー・オーシャン戦略』(Harvard business school press 2005.2)により提唱されている戦略。競争者のいないまだ生まれていない新たな市場、無限の可能性を秘めた未知の市場のことを「ブルー・オーシャン」と名付けている。ユーザーに高付加価値な製品やサービスを低コストで提供することで高利益を得る。これに対して企業が存続のため、既存製品やサービスを改良することで、激しい競争をする高コストな市場を「レッド・オーシャン」と名付けている。
大きくは差別化戦略だが、競争戦略という視点ではなく高付加価値を持つ新市場を見出すことにフォーカスする。重要ツールとして「アクション・マトリックス」、「戦略キャンパス」などを提示しているが、筆者流にいえば、誰もが見逃していることに気付く観察力である。他社との競争の中に優位性を求めること、損得が考え方の前提にになっている、いわゆる会社人間には難しいだろう。参考:2011.12.20ブログ記事

(追記)イノベーションとは?その5 イノベーターはナウイスト
2015年元旦、Eテレでスーパープレゼンテーション「伊藤穣一×山中伸弥 未来を語る」が放送された。Nowist, Nowism(ナウイスト、ナウイズム)が印象に残る。考えている間、躊躇している間にもイノベーションが起こっている。今やらないリスク、実行したことにより遭遇するであろうリスク、どちらが大きいリスクなのか、後で後悔するのはやはり今やらなかったことのリスクの方と仰る。どうやらイノベーションとは、何を実現したいのか、思ったら動くの行動力に尽きるのかもしれない。「いつやるか?今でしょ(林修)」。もっとも行動が先とは言っても、ほとんどの人が失敗していることと同じことを、何の新しい着眼点もなく、ただ偶然の幸運を信じてやっても失敗する。字義的に幸運は偶然に訪れるものだがもちろん基礎知識あってのこと。

(2015.1.15)イノベーションとは?その6 イノベーターはリアリスト
1/15 NHK BSプレミアム「英雄たちの選択、信長は本当に天下を狙ったのか?」が放送された。
信長のイメージは、戦国の革命児、破壊者など天下統一という野心のためには手段を択ばない人物であった。しかし最近の研究から、従来はかいらいとして利用していたとされる将軍・義昭に、実は忠義立てしていたことが新資料からみえてきたというもの。ここでの討論で「イノベーターはリアリスト」なのではないかという意見が出てきた。優れた経営者はイノベーター、イノベーターはナウイストとも符合し興味深かった。

(2015.1.15)村上隆的イノーベーション
 2013.1.12ブログ記事

(2015.1.16)キャッチダウン型イノベーション
発展途上国の企業が、途上国の所得水準、需要、社会環境に適合的な製品を生み出すために、先進国企業とは異なる方向に技術を発展させる活動が、世界経済の中で存在感を高める中国やインドで観察される。この動きを「キャッチダウン型イノベーション」と呼んでいる。これまで技術力で世界をリードしていると自負してきた日本企業だが、自分達は世界の先端を走っていると思っていたら、後を振り返ってみたら誰もあとをついてこず、ガラパゴス化しているということもありうる。
出典:丸川知雄「発展途上国のキャッチダウン型技術進歩」 『アジア経済』LV-4 (2014.12)

(2015.2.16)言葉としてのオープンイノベーション
自社技術だけではなく他者が持つ技術やアイデアを持ち寄り、組み合わせて革新的な商品やビジネスモデルを生み出すこと。ハーバードビジネススクール、ヘンリー・チェスブロウが提唱した。ベンチャー企業の増加によりお互いの技術を組み合わせる場面、開発期間を短縮する必要性が増していることで注目されている。最近の話題では、トヨタが燃料電池車(FCV)に関する特許の公開を決めたこと。FVC普及にはFCVそのものが約700万円と高価な上、水素製造、水素ステーション設置など膨大な投資が必要となることからトヨタ単独では普及に限界があるとの判断による。ただトヨタにとって競争優位が維持される中で市場が成長するのでなければ慈善行為となってしまう。オープンイノベーションの本来の意味は対等な協力関係の中で商品開発し市場開拓することにあとすればトヨタの場合はやや違う。

(2015.3.25)改めてシュンペーターが考えたイノベーターとは?
「起業家が必要とするものは何か。それは、「意志と行動のみ」である。起業家の意志と行動が体現するものとは、指導者精神(ledership)である。指導者のタイプに固有の機能とは、新たな可能性を生み出したり、見つけ出したりすることではない。実践である。指導者精神に必要なものは、知性よりも意志であり、思想よりも権威や魅力といったものなのである。」(中野剛志『資本主義の預言者たち』角川新書より)

(2015.4.22) 17年以降、従来型携帯の生産終了
日本の携帯端末メーカー独自のOSを搭載した従来型携帯電話(通称:ガラケー)の生産を2017年以降に中止する。開発コスト削減などのためで、開発する全端末のOSをスマホの標準である米グーグルのアンドロイドに統一する。現在、スマホと従来型携帯の出荷台数比率はほぼ半々となっている。(日経) 従来型携帯電話の需要がまだ依然としてある。年寄を中心にして使い方に慣れていること、電話、簡単なメール以外はあまり使わないなどの理由からだろうが、メーカーは何か重要なことを無視しているように思えてならない。ユーザーが携帯に求めているものは何か、それを無視しているように思えてならない。これから日本では高齢化社会に突入する。アジア各国でもそうだ。こうした需要に真摯に立ち向かうことこそ大事なのではないか。

(2016.2.14) イノベーションをヘーゲル「ミネルヴァの梟」から考えてみる
岩崎武雄編『世界の名著35ヘーゲル』中央公論(1981.4)、「法の哲学、序文」 P.174 より
「世界がいかにあるべきかを教えることにかんしてなお一言つけくわえるなら、そのためには哲学はもともと、いつも来方がおそすぎるのである。哲学は世界の思想である以上、現実がその形成過程を完了しておのれを仕上げたあとではじめて、哲学は時間のなかに現われる。・・・・・哲学がその理論の灰色に灰色をかさねてえがくとき、生の一つのすがたはすでに老いたるものになっているのであって、灰色に灰色ではその生のすがたは若返らされはせず、ただ認識されるだけである。ミネルヴァのふくろうは、たそがれがやってくるとはじめて飛びはじめる。」 ミネルヴァの梟:知性ないし哲学。

(2017.5.6) 越後屋三井呉服店
これまでわが国における立派なイノーベーションを忘れていた。三井高利(1622-94)、高平(1653-1737)が創始した三井越後屋呉服店の商法だ。良く知られている現金掛値無、さらには店頭での注文仕立て、広告(今でいうチラシ)など画期的な商売方法だった。それまで誰も考えもしなかった商法を考え出したことが素晴らしいのだが、時代は武断政治から文治政治へ、世の中の変化からその可能性を感じ取ったところがまた素晴らしい。外国の例を見るまでもなく三井は正真正銘のイノベーターだったのだ。ところで最後のチラシのこと。奥村政信(1686-1764)画『駿河町越後屋呉服店大浮絵』ではしっかり遠近法(近くの物は大きく、遠くのものは小さく)が採用されていること。今では当たり前になっていることがこの時代に開発されていることを考えれば、当時の人がいかに自由な発想をしていたかが分かる。

(2019.7.29) イノベーションの方程式
M=(E×S×S×F)/G
M:増加するならイノベーションを受容するが減少に向かえば排除へと転換する数字
E:持ち分比率(インセンチーブがプロジェクトの成果に影響する程度)
S:管理幅(企業の各幹部の直属の部下の平均人数。Gとも関連する微妙なパラメータ)
F:適合率(プロジェクトに費やす時間から得られる報酬値/社内政治に費やす時間から得られる報酬の値の比) G:給与増加率(昇給することによる平均増分)
数式というより概念としてあるべき組織運営を考える上で役に立つかも知れない。
出典:Safi Bahcall「リーダーは4つの制御パラメーターを調整せよ、イノベーションの方程式」August 2019 Diamond Harvard Business Review )
by bonjinan | 2014-08-11 18:47 | 読書