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宇宙論を垣間見る

池内了『宇宙論と神』集英社新書(2014.2)
望遠鏡の発明を機に、人々が認識する宇宙は太陽系を越え、銀河宇宙へと広がった。さらにはそうした宇宙が数多く存在するというようなことが言われるようになった。宇宙は神が創造したとするならばはたして神はどこにおられるのか。人々の知見の広がりとともに遠くに行ってしまうのか、そんな論調で宇宙論の発展を解説してくれている。ここではハッブルとアインシュタインにまつわるエピソードをピックアップしたいと思う。まずハッブルから。宇宙が膨張していることを観測結果から決定的に突き止めたのはハッブル(1889-1953)だった。「ほとんどの銀河はわれわれから遠ざかっており、その遠ざかる速さは距離に比例する」、すなわちハッブルの法則を見出してからであった。しかしハッブルは「自らの観測結果の解釈に疑問を持っていた。自らの観測結果を宇宙膨張の直接証拠とは考えず、銀河からくる光がエネルギーを失い、赤い方にずれるからだという説を採用していた」という。次にアインシュタインにまつわる話。ハッブルが観測結果を発表する10年以上前の1916年にアインシュタイン(1888-1925)は「一般相対性理論を発表し、1917年にはそれを宇宙全体に適用した宇宙方程式を提案していたが、その方程式によれば、宇宙は収縮するか膨張するかの運動をしなければならなかった。永遠に不変であり、静的であると信じていたアインシュタインは、自らが提案した方程式に宇宙項を人為的に付け加え、宇宙が運動をしないよう操作した。彼は静かな宇宙を統括している平和的な神を考えていたのである」。いわゆる定常宇宙だ。1922年にアレクサンドル・フリードマン(1888-1925)が「アインシュタインの方程式を正確に解き、宇宙が距離に比例して膨張しているという解を示した時、アインシュタインはクレームをつけたくらいである」。ハッブルの観測結果が示されてからようやく有名な言葉「生涯で最大の失敗」として宇宙項を引っ込めた。二人の偉大な科学者には共通したところがある。時代は変っても現代の科学者も同じだと思うが、自然は神の創造物、そこには必ず秩序(法則)があるはずとの思いが探究心を駆り立てていること。しかし自ら導き出した理論、苦労してえた観測結果とはいえ、無限に広がる宇宙、すなわち無秩序に拡散しばらばらになってしまう宇宙など神が創るはずがないと考えていたと思われること。衝撃的な知見に直面し逡巡する二人の姿は天才科学者とはいえまさしく人間だ。ビッグバン宇宙論ですべての疑問が解けたわけではない。ビッグバンはどのように引き起こされたのかの疑問はむしろ大きくなった。やはり宇宙の創造主は神なのか。そのほか面白い話がたくさんある。基礎知識不足の私には良く理解できない個所が何か所あったが、それでも興味深く読めた。

補足:アインシュタインに関連して
アインシュタインはアインシュタイン方程式に宇宙項を入れた。ではアインシュタインは神を念頭に神の創ったものには秩序があると考えて定常宇宙を想定していたのだろうか。アインシュタインの性格からすればどうもそうではなさそうだ。「アインシュタインは終生、人々に頭ごなしにものを教える者に対して強い反発心を抱いていた。キリスト教の立場からは無神論者とみなされていた」(三田一郎『科学者はなぜ神を信じるのか』講談社)というから、神の存在を意識したというより、自らの考えとして自然には秩序があるとの思いが強かったと言うべきだろう。
by bonjinan | 2014-02-25 20:44 | 読書