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日本人はリスクを避けたがる

山岸俊男+メアリー・C・ブリントン『リスクに背を向ける日本人』講談社現代新書(2010年)を読んだ。
まず驚かされるのは、2005年から2008年に世界各国で実施された「世界価値観調査」の結果。「自分は冒険やリスクを求める人」かどうかを訪ね、「自分はあてはまらない」と答えた人の割合をみたもので、調査した48か国では20%弱から70%強までばらついているのだが、日本は何とその割合が最も大きいのだ。なぜこれほどまでに「内向き指向」になってしまったのか。著者たちは、「ニートやひきこもりに代表される若者の「リスク回避傾向」が、実は、若者だけではなくて、日本社会全体を特徴づけていること。そして日本人全体を特徴づけているこの「リスク回避傾向」は、実は、(日本社会の)リスクが大きいことに原因している」として対談が進む。そして「日本人のリスク回避傾向は日本社会と経済にとっての大きな足枷になるだろう」と警鐘をならしている。その一つの例として雇用の問題が取り上げている。日本で雇用の安定といえばクビ切りのないことと同義だ。アメリカでもクビを切られることは気分の良いことではないとしても、新しい職が見つけられると考えるから悲劇が起こったとまでは思わない。キャリアと努力次第ではむしろ所得が上がるかも知れないからだ。少なくともそう思える社会だということだ。ではどちらがリスクが高いか考えてみれば、一度クビになったら新たな職を見つけられない、或いは見つかったとしても給与が激減する日本こそハイリスクな社会だとなる。しかもわが国において、国際競争に負けた企業がどんどんリストラを断行する一方、かつて規制緩和と並行して盛んに宣伝されたセフティーネットなどほとんど機能していなく、無いに等しいことを考えると、リスクは益々高くなってきていると言えるだろう。著者たちの言うように、日本人に蔓延してきた「リスク回避指向」は個人の気持ちの問題としてではなく、社会の仕組みがそうさせていると考えた方が良さそうだ。だがどうすれば良いのか。簡単に言えば社会全体で再チャレンジ可能な社会を創るということだが、企業の人事制度、学校の教育制度、社会保障制度など社会制度全般に絡む問題なので複雑ではある。ただ取組まなければ社会全体から活力が失われていくのも確かだ。著者たちは、キャリア、資格、能力などをベースとした「開かれた労働市場」創りをイメージしているように受け取ったが、もう少し言及して貰いたいところだ。コミニュケーションについても面白いことが書いてある。日本でコミュニケーションといえば以心伝心的に分かり合うこととされるが、アメリカでは自分の考えていることを伝え協力してもらうためのもので生きていく上での基本的な能力と考えられていることだ。著者たちは、日本のこうした特質は、経済活動がますますグローバル化し、文化的背景が異なる人の間でスピーディーに物事を処理しなければならない時代にあって、大きな障害になると指摘する。その他、面白いことがたくさん書いてある。なお、日本人のコミュニケーション能力低下については、猪瀬直樹『言葉の力』中公新書ラクレ(2011.6)でも取り上げられている。こちらの方は、現実の生活シーンを引き合いにして論じられているので、また一般読者を意識した作家の表現力もあって、はっきり理解することができる。
参考:2012.10.29記事「聞き手責任」2013.8.11記事「日本人の満足度」

追加、2013.10.23(金融資産の運用面からみたリスク回避の傾向)
日本の金融資産、家計1590兆円、事業会社845兆円。
6月末時点で銀行などに預けられた預貯金は1261兆円、このうち融資に回っているのは682兆円(対預貯金比54%)に過ぎず、残りの多くは国債で運用されている。銀行はバブル崩壊の怖さを知っているからこそ融資には慎重なのだが、慎重なあまり有用な投資先を開拓する「目利き力」も低下している。(日経2013.10.23)

追加、2013.10.24(パナソニック、半導体部門の社員半減)
パナソニックは半導体事業に携わる約1万4000人いる連結従業員数を14年までに半減するという(日経13.10.24付)。製造業を代表してきた電機で、近年、こうしたニュースが次から次ぎと続く。再雇用の口といってもかなり難しいであろうことを考えると胸が痛む。先に述べたように、わが国では再雇用の門は限りなく狭い。このことは経営者も十分承知しているはず。結果論ではあるが、ならばなぜ今日の姿を予見し手が打てなかったのか。厳しく問えば、これまでのリスク回避、即ち問題の先送り経営が結果として大きな困難を招いているのである。新しい事業を興し、競争力のなくなっている事業を縮小していく、その先見性がなかったということである。パナソニックに限らず、日本の企業は新しい時代を切り開く創造力が欠けているいるのではないか。気になるところだ。さらには、みずほ銀行における問題融資の放置も、社内的には認識されていたのだから問題先送りの典型的事例と言えるだろう。幹部の処分で決着するようだが、企業統治上の問題は残る。問題の核心はそもそも社長、幹部役員の交代において明確な引継ぎ、明確なミッションをもって任命しているのかどうか、役員会における相互監視、監査役機能などが風通し良く機能しているのかどうかだろう。

追加2014.2.26(パナソニック、テスラと車用電池工場)
パナソニックは米電気自動車メーカーのテスラ・モーターズと共同で、米国に電気自動車用電池工場を建設することで最終調整に入った。総投資額は1000億円を超えるとみられている。(日経)
テスラは2003年にシリコンバレーで設立された新興企業。前回はパナソニックのコーポレートガバナンス問題について書いたが、今回のような大胆な挑戦には拍手したい。ただしプラズマパネルへの投資と言い、少々大胆とも思えるが成功を祈りたい。

2014.4.28(パナソニック黒字転換)
パナソニックの2014年3月期決算は純損益1204億円の黒字(前期は7542億円の赤字)となった。黒字は3年ぶり。なお売上高は前期比6%増(7兆7365億円)、営業利益は90%増の3051億円。絵に描いたようなV字回復だ。思い切ったリストラの結果だろうが社員の士気など大丈夫なのだろうか。

2014.9.15 植物越す光合成
パナソニックは太陽光と二酸化炭素、水を使ってメタンやエタノールといった燃料をつくりだす次世代技術「人口光合成」で、世界最高の変換効率を実現する電子材料を開発した。メタンなどの生産量が従来の5倍に高まったという。実証実験を2020年までにはじめこの分野のビジネスで先行したい考えだ。植物の光合成における太陽光のエネルギーの変換効率は0.2%程度だが新技術では0.3%だという。改良を重ねれば1%程度になるという。(日経) エネルギー資源のないわが国にとってもっとも重要なテーマに挑戦していることに拍手したい。ただ実用化が2020年というのは先過ぎる。最も重要なのは研究で世界に先行することではなく先んじて実用化することだ。集中して貰いたい。
by bonjinan | 2013-10-17 10:33 | 読書