人気ブログランキング |

AREKORE

bonjinan.exblog.jp
ブログトップ

所得再分配調査結果

厚労省から3年毎に調査される2011年の所得再分配調査結果が公表された。
①当初所得(所得+拠出(税金+社会保険料)と再分配後所得(所得+受給(年金+医療+その他)を見ると1世帯当たりの平均当初所得は404.7万円(内拠出94.8万円)、再分配後では486.0万円(内受給176.1万円)となっている。当初所得と再分配後所得の差は大きくは拠出、需給の差であり、社会保障制度が賦課方式となっている以上、人口動態を踏まえた税と社会保障の一体改革が依然として重要であることを示している。米国ではオバマケアをめぐり大きな問題となっているが、安易に自己責任の方向に流れることは後で述べるジニ係数(所得の格差を示す指標)とも絡み社会の不安定化に結び付くことになるところが悩ましい。
②当初所得と再分配後の所得をジニ係数でみると、当初所得の格差では0.5536、再分配後では0.3791であった。3年毎に行われる同調査を時系列でみると1999年以降、当初所得では0.4720→0.5536と確実に貧富の格差が拡大しているのに対して、再分配後所得では0.3814→0.3791とほぼ横ばいに推移している。ジニ係数で社会が混乱する警戒ラインは一般に0.4を越えたところからと言われる。わが国では少子高齢化の中で社会保障制度に大きな問題を抱えながらも、年金等社会保障制度で安定した社会になっているのだとも言える。理屈の上ではジニ係数が大きくても貧富の格差が固定化せず敗者復活が信じられる社会であればそれがまた社会の活力となるのだが、米国などでも最近、アメリカンドリームより格差の問題が論じられるようになり、まず成長ありきで突き進んできた中国が格差の拡大、固定化に腐心しだしたことを思えば、高度成長期を過ぎた国では成長に依存した問題解決から、高成長を前提としない安定した社会の構築が重要テーマになってきているといえる。現状では受給者と拠出者の世代間の問題としてある程度はお互い様感覚の中で理解されているのだろうが、長期的にみれば若年層における所得格差の拡大の方がより問題になるだろう。社会保障制度以前の問題として、格差が拡大するからだ。若年層の雇用の拡大、同一労働同一賃金をベースとした所得の底上げが極めて重要となる。
参考:厚生労働省ホームページ(所得再分配調査結果)

追加
世界の先進国ではロングレンジでみて労働分配率が低下してきている。経済のグローバル化に伴う賃金低下圧力が増していること、投資コストの低下に伴って労働代替的な設備投資が高まり雇用、賃金が抑制されていることなどによる。このため高度な知識、スキルを要する分野と単純労働分野では大きな賃金格差が生じ、所得格差の拡大は構造的なものとなっている。所得の再配分には財政難もあり限界があることを考えれば、雇用を生み出す新たな産業の育成(単純には工数=価値)が大きな課題であることが分かる。経済理論に「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する」という説があるが、先に述べたように先進国における労働分配率の低下は20、30年レンジでの趨勢であり、トリクルダウン説は格差の収斂までも意味する概念ではないことが分かる。中国においても鄧小平が「先富論」を掲げ改革開放を進め大きな経済成長を遂げたが、これに比例するように労働分配率が低下し格差が拡大固定化していることをみれば格差是正策としての先ず成長ありきは問題をさらに複雑にしているだけのような気がする。、

追加2013.11.13
総務省が12日発表した7~9月期の労働力調査によると、正規従業員3295万人(対前年同月比-32万人)、非正規従業員1908万人(同+79万人)。雇用者数も増えたが非正規(全体の36.7%)も増えている。
引用;総務省ホームページ「労働力調査」

追加2013.12.17日経夕刊
厚労省のブラック企業の疑いがある企業への立ち入り検査結果によると、全体の82%に当たる4189企業・事業所で違法な時間外労働など労働基準関係法令の違反があったという。法令違反の内、違法な労働時間外労働43.8%、賃金不払い残業23.9%など。こうした姿をみると労働市場という言葉を使うことすらはばかられる。

2015.1.15 世代間格差と経済成長
経産省産業構造審議会政策部会(2011)『中間とりまとめ』による世界の「世代間不均衡と実質経済成長率(幾何平均)の関係」をみると実質経済率が低くなると世代間格差が大きくなる関係が示されている。日本は格差も大きく成長率も低い。成長鈍化が格差を拡大しているのか、格差が成長を阻害しているのか、両面からの解釈が可能であるが、著者は少子高齢化のわが国においては、後者が悪循環をもたらしているのではと指摘している。。(加藤久和『世代間格差』ちくま新書、2011年)
by bonjinan | 2013-10-12 12:27 | 政治・経済