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ドイツの暮らし

ユーロ圏で今、もっとも存在感のあるドイツとはどんな国なのか。
川口マーン恵美『住んでみたドイツ、8勝2敗で日本の勝ち』講談社+α新書(2013.8)を読んでみた。
普通のドイツ人はどんな生活をし何を考えているのか紹介してくれている。「日本の尖閣問題、ドイツのアルザス地方」、「日本のフクシマ、ドイツの脱原発」、「休暇がストレスのドイツ人、有給を取らない日本人」、「不便を愛するドイツ、サービス大国の日本」、「EUのドイツはアジアの日本の反面教師」などのタイトルで書かれている。外国を知ることは日本を知ることであり、見直すべきこと守るべきことを知ることでもある。興味深く読めた。著者は最後に、EUの中のドイツとTPPに参加した日本を対比し、国情、国民性の異なる国家間の経済統合の難しさを指摘し危惧している。これも比較対照として参考になる。
参考:2013.2.5ブログ(ドイツの製造業)

追加:13.8.26日経夕刊
ドイツ交通網混乱、「ドイツで公共交通網への信頼低下が問題になっている。鉄道ではバカンス中の職員の穴埋めができず、列車の遅延・運休が相次いだ。・・・休暇取得に寛容なドイツ社会でも批判が噴出。・・・」

追加
西ドイツ大統領、ヴァイゼッカーが1985年5月8日、国会で行った演説「問題は過去を克服することではありません。・・・非人間的な行為を心に刻もうとしない者は結局のところ現在にも盲目になります。」がよく引用される。気になって読み直してみた。川口氏はこの件について直接は触れていないが、ドイツが領土奪還を諦めた理由として、「第二次大戦後、ドイツは、固有の領土として信じていたシュレージェン地方や東プロイセンを失う。前者はそれ以来ポーランド領に、そして、後者は半分がポーランド領、もう半分がロシア領になった。・・・ドイツは長い間、この国境を認めなかった。ここはヒトラーが他国から奪ったものではない。12世紀ごろ、ドイツ騎士団が入って以来、ドイツ化が進み、日本人にとって四国が日本であるのと同じくらいに、確かなドイツ領であった。」と書いている。ヴァイゼッカーの演説はヒトラーの非人間性を糾弾するものだが、それと引き換えに多くのものを失った無念さ、言うに言われぬ賠償問題など複雑な心境が背景にあると考えるのが正しいであろう。ドイツに長年暮らした筆者の知人に言わせると、日本人はドイツ人を美化しすぎているという。ヒトラーを支持したのもドイツ人であり、また批判しているのもドイツ人である。それぞれの地域の歴史、文化が色濃く残るヨーロッパではそれぞれを容認し割り切って生きることがむしろ生活の知恵になっているのだと。この見方が大勢かどうかは分からないが問題を厄介にすることで得られるものは何もないことを共通認識として持っているとは誰もが言う。戦争についてはヒットラーが悪かったのだと。そういえば存在感を増しているメルケル首相の政策のこと。政治リーダーを理念型、現実主義型で分けるとすると、メルケル首相は現実的判断で動いている。それが国益に照らして的確であるために支持をえているのだろう。

2015.3.6 EU優等生の光と影
今絶好調のドイツ実際はどうなのだろうか。『週刊東洋経済』3/7版より
2014年輸出額:1045億ユーロ(約14兆円、前年比+3.4%)、貿易収支:199億ユーロ(約2.5兆円、同+3.4%)、貿易黒字はOECD加盟国中最大。失業率:4.8%(12月)、ほぼ完全雇用。なぜ「欧州の病人」とまで言われ失業が蔓延したドイツが復活したのか。東洋経済によると、前シュレーダー首相が03年に実施した「アゲンダ2010」の名のもとに戦後最大の社会保障制度、雇用市場の改革を実施した結果によるとする。2000年を100とした2010年の労働コストをみると、ユーロ圏全体が120であるのに対してドイツは106、賃金上昇を抑えていたことが分る。問題はないのか。2015年国勢調査によると、5人に1人が貧困と訴えているという。貧困率の出し方は国により定義が異なるがEU全体としては24.5%というから僅かに低い程度。絶好調のイメージとは合わない。ドイツの富の分配状況はEU内で最も不平等だとの意見を紹介している。地域別にみると、活況のミュンヘンでは10%程度でもっとも低く、ライプチヒでは25%など地域差もかなりあるようだ。こうした病人からの回復経過、所得格差のあることを知ればギリシャにおける反緊縮財政政権誕生への不満、反ユーロ政党(AfD)の台頭など何となく分ったような気になる。

2015.3.6 メルケル首相来日
メルケル首相の来日(9日~)は08年7月の北海道洞爺湖サミット以来の約7年ぶり。中国訪問の7回と比べると極めて少ない。日独間には特に話すべき案件がなかったかのようでもある。中国訪問は経済関連での訪問が多くいかにも実務的な印象を受ける。今回の共同声明が注目される。

2015.3.9 メルケル首相来日講演
メルケル首相は9日、浜離宮朝日ホールで来日講演した。東アジアで日中韓など近隣諸国の緊張が続いている問題を巡り「大切なのは平和的な解決策を見出そうとする試みだ」とのべ関係国に緊張緩和に向けた取り組みを促した。また質疑応答で、ドイツが欧州で和解を進められたのは「ドイツが過去ときちんと向き合ったからだ。隣国(フランス)の寛容さもあった」と述べた。東アジアでも「あらゆる努力を惜しまず、平和的な努力をする必要がある」と語った。(朝日新聞digital) 共同記者会見では「過去を総括することが和解の前提になる」と述べ、近隣諸国への対応で日本に不満を滲ませた。(日経)

2015.3.11 メルケル首相発言
メルケル首相は10日、産業界などの女性代表を都内ホテルに招き朝食会を開き女性が活躍できる社会づくりについて意見交換した。その中から「企業などで一定数の女性幹部を促すための数値目標やクオータ制(割当制)の必要性を強調した」。ドイツでは連邦議会(下院)が大企業約1000社の監査役会に占める割合を30%以上にすることを義務付ける法案を6日可決したばかり。また理科系の女子が日本で少ないことを問題点として挙げた。(日経)
(補足)ドイツの監査役会
ドイツの監査役会は日本の監査役会とはかなり異なる。業務執行機関である取締役会が企業を代表し経営業務を執行していることでは日米と変りはないが、企業の最高統治機関は監査役会であるという点において日米とはかなり違う。また監査役会には株主、経営者だけでなく、企業の所有権をもっていない労働者、労働組合など利害関係者(ステークホルダー)全員が参加する共同決定制度となっている。ROEなど株主利益を最重要視する米国型、これをお手本とする日本型コーポレートガバナンスと違うということだ。 

2015.4.8 ギリシャの賠償請求
ギリシャがナチス.ドイツによる第2次世界大戦中の占領で同国が受けた損害として、ドイツに2787億ユーロ(約36兆円)の賠償金支払いを求めた。ギリシャの債務乗り切りへの時間稼ぎとみられているが、ドイツのガブリエル経財相は「ばかげている」と取り合わない姿勢を示した。ドイツは1960年に1億1500万ドイツマルクの支払いを行いギリシャへの義務を果たしたと繰り替し主張した。(ロイター)
そもそもEU発足はこれまでの恩讐を超えて、国民国家の枠組みを超えて大同団結すべきだと認識し発足したのではなかったのか。もし不都合があれば歴史を巻き戻して議論しなければならないとすると共同体的議論は所詮無駄だとなる。経済交流も無意味だとなる。
(補足)2015.7.23ブログ記事「ギリシャ危機その後、エマニュエル・トッドの見方」

2015.10.5 ドイツの強さと弱さ
私たちはドイツ人のイメージを合理主義者と捉える。しかし良く良く考えてみると合理的考え方とは常識的考え方にも似てそれが普遍的か、言い換えればどこでも誰にでも通じる考え方なのかと問われれば自信がなくなってくる。エマニュエル・トッドはドイツ文化には、日本もそうだが直系家族(長男を跡継ぎにし、長男の家族を両親と同居させ、他の兄弟姉妹を長男の下位に位置づける農村の家族システム)という形態の影響が残るという。権威の構造に家族的・家父長的性格がみられるという。そう言われれば特定のニッチに対して品質とテクノロジーで決定的な強みを発揮していること、VWの確信犯的法令違反も何となく理解できる。またトッドは言う。日本とドイツの違いはその性格において日本は他人に迷惑を掛けないがあるがドイツはむき出しの素直さがあるという。
参考:エマニュエル・トッド『ドイツ帝国が世界を破滅させる』文春文庫(2015.6)

2016.3.14 独、反難民政党が躍進
ドイツで13日、州議選が実施された。
反難民を訴える民族主義政党「ドイツのための選択肢」が躍進する一方、寛容な難民政策を掲げたメルケル首相が率いる保守系の「キリスト教民主同盟(CDU)」が退潮した。人種差別の激しい旧東独ザクセン・アンハルト州で24.2%に達し州議会の第2党に躍り出た。旧西独2州でも10%台となった。但しいづれも与党入りする公算はないという。(日経)
近年、急速なグローバリゼーションの進展の反動から、ドイツのみならず米大統領選でも足元の自治を再確認したいという動き、発言が続いている。注意すべき動きだ。
by bonjinan | 2013-08-24 16:56 | 読書