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過剰資本と過剰生産

佐伯啓思『経済学の犯罪』講談社現代新書(2012.8)を読んだ。
著者によれば「市場経済学の祖」と担がれるアダム・スミス(1723-1790)もスミスが生きた時代を見ばこれは大いなる誤解だという。「スミスは重商主義を批判したが、そのスミスの批判した重商主義こそ今日いうところのグローバル経済であった」。不況時の公共投資を説いたケインズ(1883-1946)も「金融グローバリズムは資本の海外移転をもたらし国内経済を不安定にする。国内の過剰資金を国内にとどめる策としての公共投資を考えたからだ」などをあげ、吟味されることもなく、将来ビジョンなき市場主義経済学が世界を席巻してしまったことへの恨み節を述べる。そして最後に、「金融市場では過剰資本がもたらすバブルが、そして実物市場では過剰生産がもたらすデフレが共存する奇妙な現象」が起きていることを踏まえ、「グローバル化や自由競争のレベルを落とし、各国におけるそれぞれの国内経済の安定化政策を可能ならしめること」と説く。
近年、デフレ脱却という言葉を毎日聞く。デフレの原因は、製造業における生産技術分野も含めた技術革新が飛躍的に進展し、また標準化が進んだことによって世界中誰でもどこでもいつでも生産できる状況が出現し、常に生産過剰な状態が続いていることによる。また過剰資本がこれを支えている状況である。金融緩和を幾らしようが、それが通貨安を誘導するものであるとしてもこの本質を変えることができず、金融市場だけが活況となり新しい収益源を求めてバブルを引き起こすだけだと考えると、著者の言うような「ネーション・エコノミー」を意識的につくらなければデフレ打開策はないのかも知れない。しかしそれももうできそうもない。シュンペーター(1883-1950)のいう限りなきイノベーションに駆り立てられる落ち着けることのない世界になってしまった。話しは逸れるが筆者がむしろ興味をもったのは、著者の学生時代に喧々諤々議論したという、経済学は「科学」か「思想」というところ。筆者は経済はいかなるメカニズムで動いているのか知りたいと思い勉強しだしているのですが、諸説はあっても、繰り返し確認されたという普遍性のある法則は何一つなさそうだ。やはり理想や期待をも含む思想と言うべきだろう。思想だからその思想が生まれた時代の背景を良く良く吟味しなければあるフレーズだけが独り歩きしていくのだろう。もちろんそれでも考える軸にはなるが、・・・。虚学か実学か・・・。もともと虚学であったものが実学を装ったところから本書のタイトルのような問題提起がでてくるのだろう。

2014.10.19 
私のように経済学をきちんと学んだことのない者の陥りやすいこととして、自然現象と同じように経済現象にみようとすることがある。有名な学者の説が式にまでなっていると自然現象の法則と考え世の中はそのルールに従って動いているのだと勘違いしてしまうことだ。歴史を辿れば有名な学者のかならずしも実証されていない説が政治家の思惑と重なり政策となって実体経済を動かしてしまうことがよくある。人間はしょっちゅう聞かされるとそれが常識だと思ってしまう。世の中にはこうしたことがたくさんある。
by bonjinan | 2013-02-11 22:40 | 読書