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ドイツの製造業

ドイツは政治・経済の両面でますます存在感を高めている。日本と同じく第2次世界大戦の敗戦国、またものづくりへの拘りでも似ていると言われるが、わが国の政治の貧困さは変わらないとしても、2000年代になり、日本の製造業の弱体化、ドイツの製造業の力強さが対照的に際立ってきた。その説明としてドイツはマルクからユーロになり実質的通貨安となり輸出競争力を高めたのだ、日本は技術力はあるが円高進行で競争力を失ってしまったのだとよく言われる。家電製品の現況をみれば確かにそんな気がするのだが、それで納得してしまって良いものだろうか。日本の製造業は縮小しているとは言え(GDPに占める製造業の比率:20年前には約25%あったが現在は19%に、ドイツは23%)、依然として重要な産業であり、為替レートとは違った角度から点検してみたい。朝日新聞GLOBE『知られざるドイツ』(2013.2.3)に参考になる記事があった。「日本の経産省によると、輸出企業の順位でみて上位10%までの企業の輸出が、国全体の輸出額に占める割合は、米国96%、日本92%に対して、ドイツは69%、中小企業のがんばりが分かる」、「電機大手シーメンスがベルリンに持つ教育・訓練機関には、千人を超える若者が学び、働いている。現場に強い職人や技術者を生み出しているドイツ独特のやり方だ。懸念もある・・・少子化・・・機械を魅力と思わない若者・・・」とあった。前者はわが国の産業構造が依然として大企業を頂点とするピラミッド構造であることを示すもの。もう少し変化していると思っていたのだが・・・。ピラミッド構造は事業の領域、方向性がはっきりしている場合には大きな力を発揮するが、環境の変化に対しては、大企業は大鑑巨砲的に、中小企業は親方日の丸的になるためそれぞれ柔軟な対応ができにくくなる。わが国の製造業の低迷を考えれば、企業がそんな段階から抜け切れていないということを示している。経済活動のグローバル化は止められるものではないことを考えれば、国内に残る企業、特に中小企業は視点を世界に向け、大企業が手掛けない分野で技術を磨いて挑戦して行けば良いのだ。それがニッチであっても喜びがあるではないか。記事には「ファミリー、ニッチ、そしてグローバル」とあった。後者についてはかつてわが国が高度成長期にあった時代には企業内教育が盛んに行われ、海外からは成長の原動力とまで言われたものだが今はほとんど行われなくなくなってしまった。製造業の海外移転、作業、業務手順のマニュアル化が主たる理由だが、多くの場合、マニュアルは作業、業務の手順を示したものに過ぎない。そこからは先達の創意工夫の足跡はなにも伝わってはこない。だれでも一応仕事ができる程度のものに過ぎない。製造業に限らずノウハウの伝承、蓄積こそ企業力と考えるならばかたちを変えてでも継承されるべきものなのではないだろうか。最近の企業環境からすれば製造業に限らず専門性を高め、人材配置の流動性を高める手段としても改めて見直す必要が生じているのではないだろうか。
以上、新聞記事からドイツに改めて学ぶべきことが多いことを知った。話しは若干逸れるが、今、政府は成長戦略を三本の矢の重要な柱としている。しかし個別企業の地道な変革なくしては政治的プロパガンダ、経済的バラマキに終ってしまうだろう。企業団体から円高是正、法人税低減の声は聞こえてきても、構造改革を促進するための政策提言、要求が出てこないことが不思議だ。わが国の産業をもっと真剣に考えて貰いたいと思うのだが・・・。

追加2013.11.14
欧州連合の欧州委員会は、ドイツの経常黒字が膨らんでいることに対して、域内不均衡をもたらし不安定要因になると、警戒感を示した。2012年の経常黒字のGDP比率(概略値):ドイツ7%、フランス-2%、日本1%、英国-4%、米国-2%(日経11.14夕刊)

追加2014.4.15(第4次産業革命)
4/15日経新聞はドイツの「第4の産業革命」への取り組みを伝えている。シーメンス、ダイムラーなどドイツの名だたる企業が参加して製造業の生産性を劇的に変えようとするもので、ドイツ国内でで”Industry 4.0”と呼ばれているもの。そのキーテクノロジーとして挙げられているのが、IT(情報技術)で、ネットワークに接続された機器同士が自律的に協調動作する”M2M(Machine to Machine)"やネットワークを介して得られる
生産系以外の開発、販売などの情報、更にはビッグデータの活用連携など。課題は標準化、複雑なシステムの管理、通信インフラの整備、安全とセキュリティーだとしている。具体例として、4月上旬、ハノーバーで開かれた世界最大級の産業見本市「ハンーバー・メッセ」で、シーメンスが展示した次世代の自動車生産ラインをあげている。これまでロボットは決められた手順で作業するだけであったが、車体の方にICタグを埋め込んでおき、その指示によってロボットが動く。少量多品種を大量生産品並みに安く製造できるのだという。日本もそうだがドイツも、最近、設備投資は外国に向かい国内が衰退しつつある。ドイツはこうした流れに危機感をもって取り組もうとしている。日本も企業の垣根を越えて取り組んでもらいたいものだ。(日経)
(2014.9 補足)
「独VWは比較的大きな島としての共通モジュールを入れようとしている。このモジュールの切り分け方が実に上手で、自動車をサイエンスする力が強い。それがVWの持ち味だと思います。・・・だからと言ってVWの真似をせよとの結論にはならなりません。組織能力とアーキテクチャーのバランスを冷静に分析する必要があります。」(藤本隆宏『現場主義の競争戦略』新潮新書) 

2014.11.25 ドイツの製造業(補足)
輸出大国のドイツでは規模が小さくて一般に無名だが、世界市場で競争力が高い製品をつくる約1300社が輸出の1/4を占める。(14.11.25日経)
(2017.8.10 ドイツの製造業の強さは教育制度から?)
ドイツの教育制度を概観すると三つのコースになる。①基礎学校(~10歳)→基幹学校→デュアル・システム→労働市場→継続教育、②基礎学校→実科学校→職業専門学校→労働市場→継続教育、③基礎学校→ギムナジウム→ギムナジウム→大学。このうち最も人気があるのは①で①と③の比は約7:3。デュアルシステムとは企業での実践訓練と職業学校での学習を並行して行うもの。要は職業を意識して教育するということである。(大前研一『低欲望社会』小学館新書より)

2015.9.23 VWの排ガス試験不正
世界でもトップクラスの信頼性というブランドイメージを持つ自動車メーカー、フォルクスワーゲンで確信犯的不正が発覚した。ディーゼル車に排ガス試験の時だけ排ガスを減らす(通常走行の10~40分の1)違法なソフトを搭載させていたというのだ。なぜこんなことが起こるのか、またチェックできなかったのか理解に苦しむ。成長重視の裏で内部管理が疎かになっていることの表れでもある。ドイツ企業と言えども急成長に伴って最も大事なことを忘れさせてしまうのだろう。
by bonjinan | 2013-02-05 12:31 | 企業・起業