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戦略的思考

最近、孫崎亨『不愉快な現実-中国の大国化、米国の戦略転換』講談社(2012.2)を読んだ。
我々は戦略策定の原理原則として、紀元前に中国で編纂された『孫子』の言葉「彼を知り、己を知れば百戦して危うからず」(謀攻篇)を良く知っている。近年ではマクナマラ(1916-)が、これを外的環境把握から行動計画に至る戦略策定プロセスを分析し、いわゆる「マクナマラ戦略」で示したことも知られている。また最近では、ノーベル経済学賞を受賞したナッシュ(1928-)が「ナッシュ均衡」というゲームの理論において新たな表現をしている。本書から引用すれば「我々が考える最善の戦略は、自らの国のあるべき姿を考えて出てくるのではなく、相手国の動きによって最適な戦略が変わることを数学的に証明した」と説明する。
すべて共通していることは、「相手は何を考えているのか」の理解なしには戦略は成り立たないことをそれぞれ別の表現で示していることが分かる。著者は「昔から、日本の戦略家と呼ばれる人は、相手と関係なく「自らどう生きるべきか」を考え戦略とした。自分にとっての最適な選択ははじめから存在しているのではない。相手の動きによって最適な選択は変化する」と述べる。
本書を読みながら考えてみた。戦を勝つか負けるかの二者択一的に考える思考は勇ましいが悲惨な結果を招くこともあることを、我々は太平洋戦争で知ったはずであった。しかし戦後における高度成長の成功体験が自己中化を招き、さらには元寇襲来時の思考に戻ってしまったのではないかとも思える言動が目立ってきたようにも思う。誰でも考えたくないことは考えたくない。不利な状況は深く考えたくない。明るい気分になれる筋書に陶酔したいものだ。しかしそれは願望であって戦略とはならない。むしろ危険ですらある。一番まずいのは、理路整然と強気に論拠を述べてもそれが相手、また関係国から理解されず当初の主張を後退せざるをえないパターンだ。これは双方にとって同じことが言える。最近、わが国周辺の領土問題が急を告げてきた。本書はこうした問題を冷静に考える上で参考になる。
参考:2012.7.1ブログ「地域統合」
追記:中国外務省は14日、尖閣諸島の周辺海域を領海と主張する新たな海図を国連に提出したと発表。中国関係者は「争いは棚上げにする」との暗黙の合意を日本政府が破棄したことに伴う対応としている。
参考追記:DIAMOND online 9/19「どう中国と付き合うか」
補足:ゲーム理論、ナッシュ均衡→天才的数理学者、計算機科学者・ジョン・フォン・ノイマン(1903-1957)らがつくりだした分野。簡単に言えば、相手の出方をどう読むかを体系的に研究する分野。ゲーム理論の基礎となるのがナッシュ均衡。簡単に言えば自分ひとりだけが戦略を変えても得をしないという状態を言う。代表例として囚人のジレンマが出てくる。
by bonjinan | 2012-09-14 11:33 | 読書