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フランスの謎

世界で最も全体像を掴みにくい国の一つにフランスがある。
「自由・平等・博愛」を掲げ、外交ではアメリカに勝るとも劣らない存在感を示し、花の都パリには毎年7,000万人を超える観光客を引付ける。一方、失業率でみると約10%、特に若い人では約20%にもおよび、日常茶飯事のようにデモ行進があり、またものすごい学歴主義、階層社会でもある。
観光旅行で行く程度の私に簡単に分かるはずもないのだが・・・・。
そんな疑問に、小田中直樹『フランス7つの謎』文春新書(05年)が答えてくれる。
少し抜粋してみる。
「第2の謎・・・なぜいつでもどこでもストに出会うのか。答・・・「自分のことは自分でやる」という伝統と「おたがいさま」という心性が存在してきたから」。
労働組合の代表が労使交渉、政策決定会議に参加するとしても個々の労働者の意見を反映してく
れる保証がなく直接行動に訴えるのだという。組織論から理解しようとしても分からないわけだ。
「第6の謎・・・なぜ大学生がストライキするのか。答・・・フランスは「ものすごい」学歴主義の国だが、大学生はエリートではないから。」高等教育機関への進学者は50%を超えるが、大学入学試験(バカロレア)に合格すれば入学できる一般大学とそれだけでは入学できないグランド・ゼコールと呼ばれるエリート養成校が併存する。絶対ではないが階層により小学校から自然とコースが分れてしまうのだそうだ。この階層にもとずく複線主義が分かりにくいところだ。ということで大学生はエリートと思っていないから教育環境などで不満があればデモもするのだという。自分の道は自分で拓くしかないと考えているわけだ。
以上、本書によりフランスの全体像までは掴めないまでも一部を知ることができる。
平林博『フランスに学ぶ国家ブランド』朝日新聞出版(08年)も読んでみたがこちらは駐仏大使の眼でみた国レベルの話。生活者レベルでの様子は掴めない。
※ストライキのこと仏語では「greve」

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フランス革命の有名なスローガン「自由、平等、博愛」における「博愛」の意味
「 fraternite は日本ではふつう「博愛」と訳されていますが、共同体を想定する言葉であって、
 より正確に「兄弟的連帯意識」と訳すべきだと思います。」
引用:ロナルド・ドーア 『働くということ~グローバル化と労働の新しい意味~』
中公新書 2005年

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仏大統領選に選ばれたフランソワ・オランド氏はグランゼコールのパリ政治学院を卒業、大学院に相当する国立行政学院を出ている。エリートだ。

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飛幡祐規(Takahata Yuki) 『それでも住みたいフランス』 新潮文庫(2015.1)を読んだ。パリに40年暮らす著者がみたフランスの生活風景が統計データを交えながらしっかり書かれている。「フランス人にとってブランドとはまず、特定の豊かな社会階層に自分が属することを示す印だから、高級ブティックは庶民や中産階級が足を踏み入れる場所ではないのだ。フランスの中産階級が豊かさを誇示したい、人並みにふるまいたいと思うならば、それはブランドものを身に着けることではなく2月の学校休暇に家族で1週間スキーに行き、夏のヴァカンスのあとに日焼けした笑顔をみせることだったりする。・・・」「モノをたくさん持たなくても恥ずかしくないどころか、なるべくモノを増やさない主義の人も多い。ごちゃごちゃモノで埋めず、極力すっきり広く見せるのが居住空間の理想なのだ。政府と広告はこぞって消費をあおるが、広告退治に情熱を燃やす人々もいるくらいで、市民はなかなか手強い。」その他、慎ましやかに、しかし賢く個性的に生きようとしているフランス人の姿が書かれている。「カトリック文化圏においては、金儲けはどことなく罪深い行為であり、お金の話をするのは野暮で恥ずかしいこと、ほとんどタブーなのだ。」「わたしの住みつづけたいと思わせるフランスの魅力とはお金では買えない、ひとことで言ってしまっては空回りするような、成熟した、したたかな精神である。それは、たえまなく対立・抗争を重ねた歴史の重みから生まれ、数々の矛盾を呈しながらも、しなやかなユーモアを編み続ける。幼稚きわまりない二元論がのさばる今、このしぶとさとユーモアこそ貴重なのではないだろうか。」
(書かれていた参考数字)
国立統計経済研究所の2011年の平均月収(民間、公共部門ふくめて)2128ユーロ。最低賃金の
月額手取りは2014年現在、1129ユーロ弱。しかし最も富裕な層の収入が増大する一方、低所得
層が広がって貧富の差が大きくなった。収入の中央値は2011年で1712ユーロ。

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今、大人気のトマ・ピケティ(1971-)は、バカロレアのC種(数学と科学)を取得した後、18歳でグランゼコールの一つパリ高等師範学校に入学、わづか22歳で高等師範学校とロンドン・スクール・オブエコノミクスの経済学博士号を取得している。
by bonjinan | 2011-12-24 17:49 | 読書