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新デンマーク国の話

私たちがデンマークからイメージするは酪農、アンデルセン、ロイヤルコペンハーゲン、高福祉国家、風力発電などですが詳細を知っているわけではない。遡れば内村鑑三(1861-1930)が著書『デンマルク国の話』岩波文庫で同国を紹介していたのを思い出すが、わが国が高度経済成長を遂げるなかで、彼の伝えたかったことのほとんどは忘れ去られてしまった。最近、市民講座でデンマーク大使館員から最新事情ほかの講義を受けた。「租税負担率が高いにも拘わらず国民の幸福度が高くエネルギーと食料で自立している。また先端技術を中心に国際競争力があり国民が明るい未来を語る国」だという。素朴なイメージとはまったく違っていることが分かる。以下その中身について。

【概要】
人口553万人、面積43,094平方Km (ほぼ福岡県の人口で九州の面積)
【国力】
●国民幸福度:06年英レスター大学178か国調査「国民の幸福度ランキング」第1位、
 ちなみに日本90位。ほかOECD調査でもトップクラス。
●食料自給率:300%(日本、カロリーベースで41%)
●エネルギー自給率:124%(日本約4%)
●国際競争力:13位(2010年スイスビジネススクールIMD調査(日本27位)
●IT競争力:世界3位(10年世界経済フオーラム調査、日本21位)
●技術革新力:世界3位(10年欧州委員会イノベーション連合指標調査、日本7位)
冒頭に述べたイメージの国とはまったく違っていることが分かる。
欧米企業に聞けば「ICTバイオテクノロジー、エネルギー、環境分野において、新規事業やエマージング技術(将来、実用化が期待されている先端技術)を確立するための戦略拠点であり、自社に於ける世界のR&Dセンターである」と答えるという。上記国際比較をみるとそれがうなずける。更に驚くのは食料自給率の高さにある。1973年頃には100%を切っていたが政策的に引き上げてきたとのこと。

【成功要因】
●成熟した民主主義と明確な国家ビジヨン、それを実現するロードマップと実現 
 例、GDP(1990-08年比)50%増、エネルギー消費横ばい、CO2排出15%減
 参考、投票率 80%以上(日本、2012年衆院選59.3%)
●差別化戦略(ブルーオーシャン戦略)とユーザー・ドリブン・イノベーション
●教育システム(知識でなく知恵を重視する教育)
●国家ビジョンとリンクした強力な産業政策(製造業には力を入れず知識集約型に)
こうした戦略は知識を持った理想主義者ならすらすら書けるだろうが、実行できなければ何の意味もないこと。住民参加の成熟した民主主義(コンセサス文化)による合意形成プロセスがしっかりできているからこそ決めた事を着実に実行できるのだろう。かつて内村鑑三は「愚かなる智者」より「智(さと)き愚人」と言ったという。内村はデンマーク人の国民性をしっかり掴んでいたのだ。以上、デンマークの現況についておさらいしてみたが、閉塞した社会を打ち破る最先端テーマに取組んでいる。
参考:12/12ブログ(コンセサス会議)12/7ブログ(ステークホルダー民主主義)
11/5ブログ(ポルダーモデル)





内村鑑三「デンマルク国の話」より
国の大なるはけっして誇るに足りません。富は有利化されたエネルギー(力)であります。しかしてエネルギーは太陽の光線にもあります。海の波濤(なみ)にもあります。吹く風にもあります。噴火する火山にもあります。もしこれを利用するを得ますればこれはみなことごとく富源であります。かならずしも英国のごとく世界の陸面の六分の一の持ち主となる必要はありません。デンマークで足ります。然り、それよりも小さな国で足ります。外に広がらんとするよりは内を開発すべきであります。

参考:H.C.Andersen (1805-1875) の切り絵
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『花輪をかかげる4人の少女』(1850年代)
日本・デンマーク国交樹立150周年記念「アンデルセン展」川崎市民ミュージアム(2017.4.22-6.25)にて、H.C.アンデルセン博物館蔵
by bonjinan | 2011-12-20 10:35 | 文化・歴史