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デフレの正体

今回は藻谷浩介『デフレの正体』角川書店(1010.6)を採り上げます。
わが国の長引くデフレについて、多くの経済書は慢性的需給ギャップをあげるがその原因については明確にしていない。著者は生産年齢人口(厚労省統計15-64歳)が96年以降、減少しているにも関わらず、景気は循環するもの、いつかは回復するものとの妄想がデフレを長引かせているという。生産年齢人口=消費者人口が減ってきていることが景気の下方圧力として働いているのだと述べる。このためにつねに供給過剰の状態、更には海外からの低価格品が入ってきて価格競争を激化させ付加価値の総額(GDP)を目減りさせているとする。最近、人口減少、少子高齢化が叫ばれてはいるものの、長期的には確実に大きな変化をもたらすがその変化がゆるやかであるために、経済成長すればすべては解決するとか、付加価値生産性を上げれば良いといった甘い政策、言論にかき消され問題が先送りされている。これについても著者は分かりやすく切り込んでいる。今のままでは前述の通り内需が拡大する明確な理由がないこと、特に製造業における人減らしによる生産性向上が国全体の生産性向上につながらなったことなどをデータで示している。ミクロ経済にどっぷり漬かっている人、私を含めてマクロ経済学を学び生身の生活シーンを忘れ社会全体が分かったような人には現実問題を改めて見つめ直させてくれる良書である。リフレ政策についても国際的な物品価格の下落動向の前にしては意味なきことと否定している。デフレ脱却策については、高齢富裕層から若者への所得移転による消費拡大、女性の就労拡大、および外国人観光客、短期定住客の拡大受入れの三つをあげている。しかし脱却策については問題部分がある。先ず高齢富裕層からの所得移転による消費拡大。特に大きな金融資産を温存し続ける富裕層に限って言えばその通りだと思うが、高齢者全体について述べているのだとすれば疑問が湧く。圧倒的多数は支給される年金はすべて消費に使われ、これでは不足するために貯蓄を切り崩して生活しているからだ。また日々の観光もこうしたマネーで成り立っていることも無視できないからだ。さらに個人貯蓄が金融機関経由で国債を買い支え、それが国債の暴落を抑えているのも現実だ。10年位のレンジで考えた場合、むしろ国債が安定して買い支えられるのか心配だ。次に女性の就労拡大。大いに結構だ。それには企業が企業の都合に合せられる人だけを求めるのではなく、人口減少時代を見据えて、働きやすい環境を提供できなければ、男女を問わず優秀な人材を雇用できなくなるということから認識する必要があろう。その上に立って、北欧、オランダなどにみられるよう公・労・使が徹底的に話し合って、同一労働同一賃金、男女ワークシェアの社会を構築していくことが必須になる。三つ目の観光客誘致。これも大いに結構だ。だが歴史的文化的遺産がある場所ならともかく、そうでない場所まで一律に観光を町おこしとするのには疑問が湧く。言って良かった町というのはそこに住む人が楽しみながら生活していること、またそこから元気をもらえる場所という観点から検討すべきであろう。私にはこうした疑問は各所にあるものの、机上の論を戦わせているのではなく現場から経済の立て直しを考えてみようということで書かれ意欲的な書と考えたい。
by bonjinan | 2011-11-29 15:01 | 読書