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今週の一冊、イギリス文化

今週の一冊は木下卓ほか『イギリス文化55のキーワード』ミネルヴァ書房です。
知らないことを知ろうとするばあい、イメージとしてもっていること、疑問に思っていることから入っていくのが一番良い。階級、ジェントルマン、パブリック・スクールなど55の切り口があり、どこから読んでも歴史的背景を含めて知ることができる。私が知りたかったのは幾つかあったが、"picruresqe(絵になる美しい風景)"の言葉が生まれた時代背景とその美しい風景とはどのような風景なのかであった。本書を読むと、17世紀頃、上流階級の青年が教育過程の終わりとしてヨーロッパ大陸へ旅行したグランド・ツアーにおいてイタリアで出会った17世紀の風景画の風景であったことが分かる。代表的な画家はクロード・ロラン(1600?-82)で「ハンガルと天使」にみるような実在する風景というよりは変化に富みながらも詩情豊かな「理想的風景」だった。牧歌的風景を見慣れたイギリス青年にとって新たな美意識をもたらしたようだ。その後、イギリスではこのピクチュアレスクな景色を求める国内版「グランド・ツアー」が流行ったという。また庭園造りにも影響し、後に「イギリス式風景庭園」といわれる庭園が誕生する。その先駆けとなった作者はイタリアで風景画を描いていたウイリアム・ケント(1686?-1748)であった。ベルサイユでみる直線、対称形を基本とした「整形庭園」ではなく、心地よくなるように創られた自然を活かした風景の庭園であった。こうしてみてくるとこの言葉は「実在する特定の風景」ではなく「絵に描かれた理想的風景のような風景」であるということが分かる。また当時のイギリス人のあこがれた地はヨーロッパ文明の発祥地ともいえるイタリアであったことも知れる。
by bonjinan | 2010-12-13 09:40 | 読書