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「わかりやすさ」の功罪

2002年から始まった景気拡大は、07年に頂点に達し、08年末、米国発の金融危機をもって世界同時不況に突入しました。この時期の特徴は、内需による好況ではなく外需によるもので、実質GDPに占める輸出依存度50%を超えていたことでした。これを反映するように一部のグローバル企業と言われる輸出企業とその関連企業はかつてないほどの好決算を出した。しかし企業の事情としては、原油高に象徴されるように原材料価格が高騰し続けていたにも関わらず、市場環境はグローバルな戦いの中でもあったから、販売価格には転嫁することができず、内部コストの削減に動かざるをえなく、賃金の徹底的抑制(正規社員の賃金アップ抑制、派遣、非正規雇用の増)によって凌ぐことになった。また株主資本主義の流れが強まっていたことで、利益は配当に回った。結果、一般家計への利益配分はほとんどなく、実感なき好況に終わった図式であった。次に、こうした表面的な動きの底流にあった大きな動きを振り返ってみたい。まず、株主資本主義の潮流の中での経営のオープン化、及び現場レベルでの「わかりやすさ」の追求であった。多くの企業で工数、投資削減の有力手段としてTPS(Toyota Production System)に飛びつき、現場ではカンバン方式に代表される目で見る管理が導入された。結果として、無駄が取り除かれ一定の成果を挙げてきた。管理部門、開発部門においても、生産量が増え、取引先が増え、かつ素材コストもアップしていたから、スピード判断が求められ、複雑なことも「わかりやすく」単純化し判断することが求められた。しかし、冷静に考えてみると、好況と言っても、輸出の増、言い換えるとそれまであった製品の仕向け先が変わっただけの増という幸運に恵まれただけの話だった。今、世界同時不況に直面してみると、「わかりやすさ」の追求の結果として、何か将来に結びつく芽が残ったのだろうか。グローバルスタンダードへの追いかけ、量的拡大を冷静に再点検し、まだ顕在化していないニーズ、自分では気づいていない宝探しを是非してもらいたい。かつて松下幸之助は「好況よし、不況またよし」と言った。不況こそあるべき姿を再検証する絶好の機会なのかも知れません。複雑さの中に共通性、普遍性、あるいは特異性を見出そうとする行為は人間の本能的欲求であり、むしろ創造にも結びつきますが、複雑さを吟味もなく単純化することは軽薄化と結びつきます。ここ10数年の動きはまさに後者の世界であったと思える。本項は製造業について述べたものですが、政治の世界でも紋切り型の表現が好まれましたし、マスコミ、書物・・・あらゆる分野で共通してみられた世相だったと思います。
by bonjinan | 2009-06-16 23:54 | 企業・起業