ビル建替えのため2024年末をもってしばらく休館となる「出光美術館」を訪ねた。
「鳥獣花木図屏風」(若冲)、「伴大納言絵巻」ほか日本を代表する日本画を堪能できました。
展覧会チラシ
展覧会のタイトルは「物、ものを呼ぶ-伴大納言絵巻から若冲へ-」(10/20迄)
美術館創設者・出光佐三(1885-1981)がはじめて仙厓の作品を入手してから約120年。
出光佐三、同美術館がこれまで蒐集してきた美術品の中から厳選しての展覧会。
素晴しい作品ばかりで、鬱陶しい日常から一気に楽園に来た気分になりました。
その中から特に印象に残る5点を選び素人の目からみた感想を書き留めたいと思う。
①『鳥獣花木図屏風』伊藤若冲、江戸時代
虚実を超越した動物の楽園を描き出している。
西陣織の織物図を想わせる約1cm四方の8万個を超える枡目はどんな効果を狙ったのか。
世知辛い人の世と平和な楽園の境界を暗黙のうちに知らしめる仕掛けと思えた。
天才絵師の独創的な画法に驚く。
②『十二ヵ月花鳥図』酒井抱一、江戸時代
花鳥画でもあり暦でもある。装飾美と抒情性あふれる花鳥の楽園に浸ることができた。
③重文『十二ヵ月離合山水図屏風』池大雅、1769年頃
中国の景勝地をモチーフとしながらも実際の風景を超越した楽園を描いたに違いない。
蕪村とともに文人画の大成者、日本南画の黄金期を築いた。
蕪村『山水図屏風』も隣に展示されています。
④国宝『伴大納言絵巻』(三巻のうち上巻)平安時代
応天門の変(866年)のおよそ300年後、後白河法皇が描かせたと推定されている。
詞書はないが内容は『宇治拾遺物語』巻第十「伴大納言、応天門を焼く事」と同じ。
いつの世も政争は絶えぬらしい。しかし過ちを正す動きが描かれていて救われる。
邪な行動を起す者がいてもこれを正す者がいる。これが人の世の楽園の姿なのかも知れない。
⑤重文『江戸名所図屏風』江戸時代
江戸の街と人びとの生活が生き生きと描かれている。これまた楽園の図である。
全体を鳥瞰してもよし、反対に細かく描かれた一人一人の人間のしぐさを観察しても面白い。
美術館休憩室にて、皇居桜田門を望む。屏風を観ているようである。