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少子高齢化問題

少子高齢化問題は、つい最近まで盛んに議論されたが消費増税後、依然として日本社会の大問題であるにも関わらずほとんど議論されなくなった。しかし出生率が1に近い数字である以上、議論しようがしまいが人口は確実に減少し続ける。人口の逆ピラミッド構造も延々と続く。人口の減少は経済を縮小させ、逆ピラミッド構造は働き盛りへの負担が永遠と続くことを意味し、近年おける世代内格差はそれに拍車をかける。もちろん組織の活力低下も招く。こうした人口減少は急激な減少とは言え1年2年というレンジでの話ではないから、その影響には気が付かないがじわじわと効いてくる。どこか元気のない社会、皆が不満を持つ状態が続くということだ。本稿は人口減少がどの程度の速度で進むのか、書物を頼りにした点検である。
増田寛也 『地方消滅、東京一極集中が招く人口急減』 中央公論新社(2014.8)を読んでみた。
本書には国立社会保障・人口問題研究所の推計を基にした今後の人口推計(全国平均、及び全国市町村別)が載せられていてとても参考になる。著者は人口減少は地方の問題ではなく、出生率が1.13、全国最低の生活環境にある東京圏への一極集中が日本全体の人口減少を加速すると説く。打つべき手は何でも打つべしだが、とりわけ東京への集中をくい止める地方中堅都市のダム化を提案している。国、地方官僚の相互異動「参勤交代」も提案している。参勤交代については、養老孟司 『自分の壁』 新潮社(2014.6)にも出ている。改めてそうかなと思う。その他、数多くの提言が書かれている。総花的ではあるがそれだけ手を付けなければならないことが多いということだ。ただ統計から導き出される提案はダム化だとしても若者が地方中堅都市に留まる合理的な施策が働いてこない限り大都市への移動は止められないだろう。ともあれ数字を知るだけでも読む価値がある。
以下、『地方消滅』に書かれた要点。
〈人口減少に関わる数字〉 
国立社会保障・人口問題研究所の推計を基本とした予測数字
[人口の推移]
2010年1億2806万人、50年9708万人、2100年4959万人
[合計特殊出生率(1人の女性が1生に産む子供の平均数)]
2005年1.26、13年1.43(数字があがったが、団塊ジュニアが39歳、これから減少?)
[人口置換水準(人口を維持できる出生率)]
2012年で2.07
〈人口減少のプロセス〉
第1段階(~2040年)
老齢人口増加+生産・年少人口減少
第2段階(2040~60年)
老齢人口維持・微減+生産・年少人口減少
第3段階(2060~ )
老齢人口減少+生産・年少人口減少
〈人口減少の加速要因〉
人口減少には自然減と社会減がある。
問題は人口再生産力のある20~39歳の人達の東京への人口移動という社会減。
大都市圏の雇用吸収力増加(プル型)+地方経済、雇用力の低下(プッシュ型)
→結婚適齢世代の大都市圏への集中→子供を産み育てにくい経済的、社会的環境からくる出生率の低下(極点社会:大都市圏への人口集中が日本全体の人口減少をもたらす社会)
※東京の出生率(2013年)1.13(全国最低)、沖縄1.94、全国平均1.43
以上
参考:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ

以下、新規追加順

2017.4.10  新規追加分を「日本の人口問題(No.2)」で続けます。

2016.12.22  出生数、初の100万人割れ
2016年生まれの子供の数が100万人の大台を1899年の統計開始以降で初めて割り込む。98~99万人程度になる見通し。15年は100万5677人だった。また15年の合計特殊出生率は1.45だった。団塊ジュニア(71-74年)も中年になり大きく改善する見通しはない。厚労省は近く、16年の人口動態調査の推計を発表する。(日経)働き方改革も子育て世代を考えての改革が必要になっている。

2016.2.26 国勢調査、初の人口減
総務省が2015年国勢調査の人口速報値(15年10月1日時点)を発表した。
日本人の総人口:1億2711万人、前回10年調査比94人減(0.7%減)
世帯数は最多の5340万世帯、前回調査時と比べても首都圏、特に東京への集中のは変わらず。
(補足)
人口が減少するということは人口構成が逆ピラミッドになるということ。これまで触れなかったがこのことは政治に若い人の意見が通りにくくなるということを意味する。これからの日本を背負っていく若い人の意見をどう政治に反映するのかという重大な問題が含まれている。若い人には政治経済をしっかり勉強し、何が問題でどうしたら良いのか自分達の頭で考えしっかり議論して貰いたいと思う。

2016.1.20 建設業から便利屋に
偶然見たTV朝日Jチャンで岡山市の小坂田建設の事業転換が放送されていた。かつては道路の舗装、補修などを事業としていたが公共事業の減、競争激化などにより赤字に転落。廃業も考えたが建設業のノウハウを活かしての地元の便利屋として再スタート。高齢者に喜ばれる元気な会社として再生したという内容だった。世の中には解決できずに放置されたままになっていることがたくさんある。こうしたことが解決されていけば地方もどんどん元気になって行くのだと思えた。

2016.1.1 出生数5年ぶり増
厚生労働省は31日、人口動態統計の年間推計で、2015年に国内で生まれた日本人の赤ちゃんは統計を始めた1899年以降最低だった前年を4千人上回る100万8千人で5年ぶり増加したとみられると発表した。一方、死亡数は前年比2万9千人増の130万2千人と戦後最多を更新した。これにより自然減は29万4千人で、前年を2万5千人上回って減少幅は過去最大になった。また婚姻件数は9千組減の63万5千組で戦後最少をを更新した。100万組を超えた1970年代前半をピークに一貫して減少している。(日経)

2015.10.30 中国、1人っ子政策撤廃
中国共産党の5中全会は29日、第135カ年計画の草案を固め、その中で成長力の低下につながる働き手の減少を食い止めるため「1人っ子政策」を撤廃し、すべての夫婦に第2子の出産を認める方針を示した。(日経)

2015.7.2 人口(population)という言葉の由来
神野直彦『「人間国家」への改革』NHK出版(2015.6)を読んだ。
財政学の大家が書いた「人間を手段として見る事業国家から、人間の生を最上位に位置付ける人間国家へ」の提言書。本書に「人口(population)という言葉は、古くから存在する言葉ではない。人間の社会を管理・運営する対象とみていた重商主義時代に創り出されている。1690年に、『政治算術』を著したウイリアム・ペティ(William Petty)が社会を数量化することを考え、国家の富みと力は国民の数と性格に起因することを証明しようとしたことが、人口概念の登場を物語っている。人口という言葉は、生身の人間との関係が絶たれている。人口は人間を没個性的存在の集合として取り扱う。」とある。最近、人口減少を食い止める策として、人を地方に移動させる提案がやたらと多くなっているが、どこか違和感を感じていたのだが、人口という言葉そのものにそういう背景があったことを知ることができた。著者は日本は工業化による成功体験がいまだに強く、脱工業化社会を構想しえない状況にあることを認識すべきだと指摘する。これは筆者が思うことだが、真の創造的仕事は神経をすり減らしながら競争社会を生き抜く生活からは生まれない。人より僅かに先行している程度ではすぐさま追い越されてしまう。長い目でみると生産性が低くなり、最後はゾンビ企業を生むことさえある。余裕のある大会社にはぜひほんの一部の従業員でも良いから大自然の中で大いなるチャレンジをさせて欲しいと思う。

2015.6.6 2014年人口動態
合計特殊出生率1.42、05年の1.26を底に緩やかに上昇していたが、前年の1.43から0.01下回った。平均初婚年齢、男性31.1歳、女性29.4歳、女性が第1子を産む平均年齢30.6歳 (日経)

2015.5.5 合計特殊出生率比較
日本の出生率は75年に2.0を下回ってから低下傾向をたどり、05年には過去最低でさる1.26まで落ち込んだ。その後、40歳前後になった第2次ベビーブーム世代の駆け込み出産があり、直近の13年には1.43まで回復した。ただしそれでも世界でもっとも低い水準であることに変わりはない。
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引用:5/5付け日経新聞

2015.4.18 日本の人口(2014年10月1日時点)
総人口:1億2708万人(前年同月比21万5000人減、4年連続減、08年のピークから約100万人減)
年齢階層別:14歳以下1623万人(前年同月比15.7万人減)
15~64歳7785万人(同116万人減、1.47%減)、65歳以上3300万人(同110.2万人増)
自然減(14年1年間):25.1万人減、出生児数102.3万人、死亡者127.4万人
引用:総務省17日発表の人口推計に基ずく4/8日経記事

2015.4.1 公的年金の財政状況
厚労省がまとめた財政状況。給付額50.5兆円(前年度比+1.3%)、受給者3950万人(同+0.2%)、給付の原資となる収入は保険料引き上げ等により31.1兆円(同+3%)、国地方の税負担11.5兆円、年金積立金の取り崩し6.2兆円、年金積立金の残高186.3兆円(同+5%)株価上昇で取崩を上回る運用益があった。(以上、日経)

2015.4.1 公的年金のマクロ経済スライド適用
4月1日から国の年金にマクロ経済スライドが適用される。2004年に制度改定されたが長引くデフレで実施されてこなかったもの。2015年度では、次式により年金額は0.9%増額される。
年金額の改定幅=(物価・賃金の伸び+2.3%)-(マクロ経済スライドの実施0.9%)-(特例水準の解消0.5%) 15年度は名目金額は上がるが物価の伸びに対して実質は下がることになる。なおマクロ経済スライドとは、平均余命や人口減少を勘案して支給を調整するもの。少子・長寿命化に対して減額する仕組み。物価が下落すれば調整はない。上記0.5%は過去のデフレで引き下げが先送りされたもの。適用されれば人口の逆ピラミッドが続く限り長期的な所得代替率は低下することになる。

2015.3.30 年金負担、給付水準
65歳以上の年金世代1人を何人の現役世代(20~64歳)で支えているのか(高齢者支援率)、現役世代の平均収入と比べた年金額の給付水準(総所得代替率)は?。
OECDがまとめた2012年時点の状況。
日本:2012年時点高齢者支援率2.4人、同2050年推定1.3人、2012年時点総所得代替率35.6%
以下、総所得代替率の順で主要国値を抜粋。
オランダ:3.7-1.9-90.7、イタリア:2.9-1.5-71.2、フランス:3.3-2.0-58.8、スウェーデン:3.1-2.3-55.6、ドイツ:2.9-1.5-42.0、韓国:5.6-1.4-39.6、米国4.4-2.5-38.3、英国:3.5-2.2-32.6 
(注)総所得代替率は年金/報酬額。税・社会保険料は控除前。配偶者がもらう年金は含まない。厚労省が発表する総所得代替率は年金は控除前、報酬は控除後、配偶者を含めた世帯単位。この条件では50%。日本と欧米とで算出方法が異なるのは家族制度の違いからきているが近年、夫の収入だけでは家計がなりたたないという状況になってきており、また女性の社会進出が求められている状況になってきていることを考えればOECD式の見方の方が適していると思われる。
(以上、数値引用は日経グローバルデータマップ)
世界最速で少子高齢化進む日本。これから人口の逆ピラミッド構造が延々と続く。わが国にとっていわゆる人口オーナス問題は極めて重要なのだが、問題は多岐に渡り複雑であるために先送りされ、目先の利害にとらわれた短期的な政策に終始している。最重要課題として取り組むべきである。
参考:人口ピラミッドの推移、1950年-2010年-2050年の順(総務省国勢調査、および推計)
   年齢区分:65歳~(老年人口)、15~64歳(生産年齢人口)、65歳未満(年少人口)
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追加2015.3.27 
佐々木信夫『人口減少時代の地方創生論』PHP研究所(2015.3)を読んでみた。
本書は、日本を州制にし州間の競争環境を創ることが日本を元気にする策だとする。その通りだと思う。ただ中央政官界が権限を地方に移譲すること、住民の自治意識をどう高めるかという高いハードルが立ちはだかっている。何から手を付けるべきなのか。それが州制からだとしても、今一つすっきりしない。大阪都構想もなかなか具体化の道に入らないのは、そうすることによって住民にどのようなメリットが生じるかの説明、議論が欠けているからであろうことを思えば州制化についても同じことが言える。

追加2015.3.1 統一地方選
統一地方選が1ヶ月後に迫った。アベノミクスの地方波及、地方創生が論点にされるのだろうが、表向きの議論だけだとすると現実には何の変化も起こらない可能性がある。立候補者には中央政界と直結した政治ではなく地域に根差した地域創生の提案をして貰いたいものである。
(補足)
国政選挙では1票の格差是正が以前から叫ばれながら大胆な改正が一向に進まない。
ここで出てくる意見は「地方議員を減らせば地方の意見が出にくくなる」であるが、中央政界とのパイプを売りにした発言が聞こえてきても、地方議員ならではの発想からの意見を聞いた事がない。東京育ち、地方枠選出二世議員が多い現状をみるととても納得できない。

追加2015.2.28 人口減少の経済への影響
人口減少はGDPの低下を招くことは明らかだが、最も重要となるのは1人当たりのGDPである。
標準的な経済理論では人口減少は1人当たりの所得を上昇するとも考えれている。人口減少によって、1人当たりの資本(労働装備率)が高まるため、労働生産性が上昇すると考えられているからである。ただそれには前提があり、蓄積された資本が効率的に利用されること、またその効果が労働力率の低下を上回らなければならない。
式で表せば、1人当たりのGDP成長率=労働者1人当たりGDP成長率+労働力率の増加率。
※労働力率=労働力人口(働いている人+働く意志のある人の人口)/生産年齢人口(15歳以上の人口)
引用:津谷典子、樋口美雄『人口減少と日本経済』日経新聞出版社
もっと素直に考えてみよう。GDP=労働力人口(ここでは15~64歳人口とする)×1人当たりの生産性(ここでは一定とする)の関係があるから、2010年と2050年のGDPの比は生産年齢人口の比として求められる。結果は約60%、年平均約1%の減となる。同じく1人当たりGDPを計算すると80%、年平均約0.5%減となる。筆者はこれが標準的と考える。日本の潜在成長率は1%以下、過去20年近くの実質成長率実績でも0.9%程度であることを考えると、現状のままでは0.9%も維持できないということである。
(労働生産性)
日本の1時間当たり労働生産性は2013年に41.3ドル。OECD加盟34カ国のうち20位。トップはノルウェー87ドル、ルクセンブルク、アイルランドと続き4位米国も65.7ドル、以下ベルギー、オランダ、デンマーク、フランス、ドイツ60ドル、スイス・・。労働政策研究・研修機構によると日本では週50時間以上働く人の割合が32%とフランスの3倍に上る。労働生産性は潜在成長率に影響し、人口減少が避けられない日本では労働生産性の向上が不可欠(2015.4.9日経)。

追加2015.2.28
増田レポートに異議を唱えて書かれた書、山下祐介『地方消滅の罠』ちくま新書(2014.12)を読んだ。山下氏は増田レポートはいたずらに地方消滅を煽り、地方在住者への不安を増大させ、大都市への人口流出を加速するものだと批判する。増田氏は人口減少プロセスを若者の進学、就職に伴う都会への移動、都会生活における経済的不安からくる出生率低下に求め、対策としては地方中核都市に人口流出を食い止めるダム機能を持たせるべきと説くのに対して、山下氏はでは所得が少ない沖縄でなぜ出生率が高いのか、経済的理由というより”生活にゆとり”があるかの問題だと説く。結論として今こそ成長・発展指向から循環、持続型のゆとりある生活スタイルに転換すべきなのだと述べる。またその鍵となるのは地方における住民自治の醸成を通しての地方創生だというようなことを述べている。増田氏が統計、地方財政論からみた中央官僚的立論だとすれば、山下氏は官僚的発想を嫌い社会学的アプローチから住民が主役のコミュニティーづくりが重要と説いている。両者の説はそれぞれ理解できるが明日からでも着手できる策を提示しているわけではない。最近、青年たちがゼロからの町おこししている島根県海士町(あまちょう)が話題となるが、地方中堅都市でより活力ある町になったという話は聞かない。人が増えるほどベクトル合せが難しく、増田氏の論には深堀が必要だ。一方、山下氏の論は生き方、生活スタイルの問題としては理解できてもそれを現実の経済活動、長期的に見た1人当たりのGDPの維持向上という課題とどう結びつけていくのか見通せていない。やはり深堀が必要だ。人口減少の影響は多岐に渡り複雑でそれぞれ難点があるのもやむを得ない。地方創生という論点に絞れば、まずそこに住むことが楽しい町村にするにはどうしたら良いかの議論から始めて、所得をどう増やしていくのか。こうした観点から意欲的に取組めばそれに賛同する人、企業が集まるはずだ。統計データから考えられる人口再配置論、生き方としての田舎移住論ではなく、経済合理性とも関連付けて考えようとする、藻谷浩介、NHK広島取材班『里山資本主義』角川oneテーマ21は考えるヒントを与える。
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by bonjinan | 2014-11-13 18:27 | 読書 | Trackback
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