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EU危機の実態

ギリシャ危機に始まり南欧諸国の金融危機が次から次と報じられる。在仏ジャーナリストが分かりやすく解説した書がある。広岡裕児『エコノミストには絶対分からないEU危機』文春新書(2013.3)だ。
「いまユーロはダメだと言っている人たちこそユーロは素晴らしいとギリシャ政府に甘言を弄して多額の借金をさせ、国の借金を増やさせたのです。その舌の根の乾かないうちに、今度は借金が多すぎると攻撃し多額の利益をあげました。今や「市場」は個人や企業にお金を循環させ経済社会に活力を与える場ではありません。お金を原料にしてお金を儲けるというひとつの産業の舞台です。お金づくりをする金融資本主義とものづくりをする産業資本主義は別世界になってしまった」と述べる。「世界のGDPの約24倍にも膨らんだ世界の金融取引額」を考えればまさにその通りだ。しかし一方、「EUは経済合理性の発想から生まれたものではなく、新しい社会の発想から生まれたもの。問題(財政政策は各国、金融政策は統一政策)を認識しながらも危機を確実に乗り越えてきている」とも述べる。翻ってわが国を考える時、危機はいつ訪れるか分からない。誰がどのようなかたちで支援してくれるのか、頭の片隅にはいれておく必要があるだろう。全体として繰り返し発生する金融危機のメカニズムを理解する上で良書である。話は変わって今日3/25の東京株式市場は大幅高になった。個々の企業に何の変化も起こってはいないにも関わらず・・・。関係者からはキプロス問題が決着との報道を受けての動きと解説されている。アベノミクスで膨らんでいる金融資産はどこに向かうのか、限りない資産の増殖に向かうのか、実体経済に向かうのか、それが問題だ。
by bonjinan | 2013-03-25 20:47 | 読書